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人件費率の目安と計算方法|飲食店・美容室など店舗の業種別データ

この記事の結論

人件費率は人件費を売上高で割った割合で、アルバイトの給与だけでなく、社員の給与や役員報酬、会社が負担する社会保険料まで含めて出します。日本政策金融公庫の2025年度の調査では、一般飲食店の平均値が32.9%、美容業が41.9%と業種で大きく違うため、目安は自店に近い業種の数字と比べ、自店の推移とあわせて見るのが基本です。

「うちの人件費率は、高いのか低いのか」。店舗の経営者の方から、よく受ける質問です。人件費率は、店舗経営のなかでも毎月いちばん気になる数字のひとつです。ところが、何を人件費に入れるか、どの数字と比べるかによって、同じ店でも高くも低くも見えてしまいます。

この記事では、人件費率の計算方法と人件費に入れるもの、飲食店・美容室など業種別の目安を、日本政策金融公庫の調査をもとにまとめます。そのうえで、目安を自店に当てはめるときの注意と、率が上がってきたときにどこを見るかを、自分たちも店舗を運営する立場から書きます。翌月のシフトを組むときの人件費の枠の決め方は、店舗の人件費の考え方で解説しています。

人件費率の計算方法:人件費÷売上高×100

人件費率は、次の式で出します。

人件費率 = 人件費 ÷ 売上高 × 100

式は簡単ですが、迷うのは分子に何を入れるかです。日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」は、人件費対売上高比率の人件費に、役員報酬、退職金、福利厚生費を含めています(出典: 日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査 利用の手引き」2026年10月確認)。店舗で人件費に入れるものを並べると、次のとおりです。

人件費に入れるもの 店舗で迷いやすい点
アルバイト・パートの給与 深夜や時間外の割増分も入れる
社員の給与・賞与 賞与は支給した月にまとめず、月割りで見ると推移が読みやすい
役員報酬(オーナーの給与) 現場に立っているオーナーの分も入れる
会社が負担する社会保険料 健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険の会社負担分
通勤手当・福利厚生費 まかないや制服の扱いは、毎月同じ決め方にそろえる
退職金 積み立てているなら、その分も入れる

分母の売上高は、税込か税抜かを決めて、毎月そろえます。同じ調査は売上高を原則として消費税込みで集計しているので、公的な目安と比べるときは、自店も税込の売上で計算したほうが条件が近くなります。

業種別の人件費率の目安(日本政策金融公庫の調査)

日本政策金融公庫は、融資先のうち従業者50人未満の法人の決算書をもとに、業種ごとの経営指標を隔年で集計しています。2025年度の調査(2026年8月掲載)から、店舗の業種の人件費対売上高比率を抜き出すと、次のとおりです。

業種 調査対象数 平均値 黒字かつ自己資本プラスの企業の平均 中央値
一般飲食店 464社 32.9% 31.5% 33.2%
酒場、ビヤホール 212社 32.2% 30.0% 33.0%
喫茶店 35社 29.8% 30.9% 31.0%
そば・うどん店 26社 38.2% 35.1% 37.4%
美容業 555社 41.9% 38.4% 43.8%
理容業 39社 49.8% 44.4% 50.8%
エステティック業 105社 38.0% 31.3% 36.9%

(出典: 日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」2025年度 飲食店・宿泊業/サービス業の業種別経営指標。決算期は2024年7月以降・2026年10月確認)

平均値で比べると、一般飲食店と美容業では9ポイントの差があります。差が生まれるいちばんの理由は、仕入れの重さです。売上から売上原価を引いた粗利の割合(売上高総利益率)を同じ調査のデータで見ると、一般飲食店の平均値は65.0%、美容業は84.4%です(出典: 同調査)。飲食店は売上の3分の1ほどが食材などの仕入れに回るぶん、人件費に回せる割合が小さくなります。美容業や施術の店は仕入れが少なく、売上の多くを人の手で生むので、人件費の割合が大きくなります。

施術の店には、もうひとつ事情があります。

代表・中野谷のひとこと

難しいのが、一人当たりの単価、施術単価って、上げられないっていうか。徐々に高くはなってはいるんですけど、とは言えじゃないですか。そうすると、給料がやっぱりそれに比例しちゃうんで。

施術の店では、スタッフが1時間に生める売上が、メニューの価格でほぼ決まります。価格を大きく上げにくい以上、払える給与もそこに引っ張られます。人件費率が高く出る業種ほど、値付けと給与が直接つながっている、ということです。

公的な目安を自店に当てはめるときの、三つの注意

表の数字は、自店の人件費率が業種のなかでどのあたりにあるかを知る物差しになります。ただ、そのまま「この率を目指す」と決めるのは危険です。理由は三つあります。

一つ目は、オーナーの給与の取り方です。小さな店では、オーナーが現場に立ち、自分の給与を低く抑えていることがよくあります。公庫も、小企業では人件費に占める代表者やその家族の割合が高いケースが多く、指標が実態を完全に反映しているとは限らない、と断っています(出典: 日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査 利用の手引き」)。自分の給与を抑えて率が低く見えている店は、店長を一人雇ったとたんに率が大きく上がります。比べるときは、自分が店に立っている時間を、人を雇ったらいくらかかるかに置き換えて計算しておくと安全です。

二つ目は、低ければいいとは限らないことです。表を見ると、多くの業種で、黒字かつ自己資本プラスの企業の平均は全体の平均値より少し低くなっています。ところが喫茶店では、黒字の企業のほうがむしろ高くなっています。人件費率が低いほど利益が出る、とは言い切れません。人を減らしすぎると、待ち時間や接客の質に表れ、お客さまが離れて売上のほうが先に落ちることがあるからです。

三つ目は、業態の細かな違いです。同じ飲食店でも、そば・うどん店とすし店では、仕入れと人件費の比重が違います。自店に近い業態の行と比べたうえで、なにより自店の数か月の推移を見ることが基本です。食材費と人件費をあわせて見る考え方は、FL比率とはにまとめました。

人件費率が上がったら、「1時間あたりの人件費」と「人時売上高」に分ける

人件費率が先月より上がったとき、原因は大きく二つに分かれます。人件費率は、次のように分解できるからです。

人件費率 = 1時間あたりの人件費 ÷ 1時間あたりの売上(人時売上高)

1時間あたりの人件費は、人件費の合計を、スタッフ全員の労働時間の合計で割った値です。人時売上高は、売上を同じ労働時間の合計で割った値で、スタッフ1人が1時間働くあいだにどれだけの売上をつくれたかを表します。二つとも分母が同じ労働時間なので、割り算をすると人件費率に戻ります。

上がった原因 よくある例 見直すところ
1時間あたりの人件費が上がった 最低賃金の改定、社会保険に加入する人が増えた、ベテランの昇給 値付け、メニュー、売上の伸ばし方
人時売上高が下がった 暇な時間帯に人を置きすぎた、新人の研修期間が重なった、予約が埋まらない シフトの置き方、予約の埋め方、集客

1時間あたりの人件費が上がるのは、店の努力だけでは止められません。最低賃金は毎年のように引き上げられていて、2026年度は全国加重平均で、前年度より56円高い1,177円になりました(出典: 厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金全国一覧」2026年10月確認)。

だからこそ、店の側で動かせるのは人時売上高です。来客や予約の山に人を厚く置き、谷の時間は薄くする。客単価を上げるメニューや物販を用意する。予約の空きを減らす。こうした積み重ねで、同じ時給でも人件費率は下がっていきます。シフトの置き方は店舗の人件費の考え方、店長が毎朝確かめる数字は店舗の数字を毎日見る習慣で詳しく書いています。

人件費率の上限を決めると、育て方と払い方が決まる

人件費率は、下げること自体を目標にする数字ではない、と私たちは考えています。それよりも、自店で人件費にどこまでかけられるかという上限を決めておくと、人の育て方と払い方の方針が決まります。

代表・中野谷のひとこと

例えば人件費比率系で、もうこれ上げられないよねってなったら、新人をどんどん教育していくっていう動きにしなきゃいけないじゃないですか。そこにコストをかけるんだったら、長い間働いてもらうっていう設計をしなきゃいけないかなと思って。長い間働いてもらうには、そこそこ渡さないと、長い間働いてくれないんで。

人件費率の上限が低い店は、人の入れ替わりがある前提で、誰が入っても早く一人前になれる教え方を整える必要があります。新人が早く辞めてしまう店に共通することと、最初の3か月の育て方は、新人がすぐ辞める店舗の共通点にまとめています。上限に余裕を持たせられる店は、昇給や正社員への道を用意して、長く働いてもらう設計に寄せられます。

どちらを選んでも、上限が決まっていれば、売上が伸びたときに給与へ回せる額を計算で出せます。時給そのものの決め方はアルバイトの時給の決め方で解説しています。

人件費率は、損益分岐点とあわせて見る

人件費率がわかったら、あわせて見たいのが損益分岐点です。家賃のように売上に関係なくかかる費用を含めて、売上がいくらあれば利益がゼロになるかを表す数字です。人件費率が同じでも、家賃の重い店とそうでない店では、利益の残り方がまったく違います。計算の仕方は損益分岐点の出し方、どの数字を目標に置くかは店舗経営のKPIの決め方で解説しています。

まとめ

  • 人件費率は人件費÷売上高×100。人件費には、アルバイトと社員の給与に加えて、役員報酬・会社負担の社会保険料・福利厚生費まで入れる
  • 公庫の2025年度調査のデータでは、一般飲食店の平均値が32.9%、美容業が41.9%。業種で大きく違うので、自店に近い業種の数字と比べる
  • オーナーの給与の取り方で率は大きく動き、低ければいいとも限らない。自店の推移とあわせて見る
  • 率が上がったら、1時間あたりの人件費と人時売上高に分けて原因を探す。上限を決めると、人の育て方と払い方の方針が決まる

まずは先月の人件費を、役員報酬と会社負担の社会保険料まで含めて集め直し、売上で割ってみてください。同じ月の労働時間の合計で売上を割った人時売上高も出しておくと、来月から率が動いたときに、理由をたどれるようになります。

よくある質問

人件費率はどうやって計算しますか?

人件費を売上高で割って100を掛けます。人件費には、アルバイトと社員の給与・賞与のほか、役員報酬、会社が負担する社会保険料、福利厚生費、通勤手当なども入れます。売上高を税込で見るか税抜で見るかは、毎月そろえておきます。

飲食店の人件費率の目安はどれくらいですか?

日本政策金融公庫の2025年度の小企業の経営指標調査では、一般飲食店の人件費対売上高比率は平均値32.9%、中央値33.2%でした。そば・うどん店は平均値38.2%など業態によって差があり、この人件費には役員報酬も含まれます。

美容室の人件費率の目安はどれくらいですか?

同じ調査で、美容業の人件費対売上高比率は平均値41.9%、中央値43.8%でした。仕入れが少なく、売上の多くを人の手で生む業種なので、飲食店より人件費率は高く出ます。

オーナー自身の給与は人件費に入れますか?

入れて計算します。公的な調査でも、人件費には役員報酬が含まれています。オーナーが現場に立つ店で自分の給与を低く抑えていると、人件費率は低く見えても、人を一人雇ったとたんに率が大きく上がります。

人件費率が上がってきたら、どうすればよいですか?

まず、時給などの1時間あたりの人件費が上がったのか、1時間あたりの売上が下がったのかを分けて確かめます。前者なら値付けや売上の伸ばし方を、後者ならシフトの置き方や予約の埋め方を見直します。

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