飲食店の倒産が増えている背景と、集客・採用で先に打つ手
この記事の結論
帝国データバンクの調査では、飲食店の倒産は2025年に900件と過去最多を更新し、2026年上半期も473件と上半期の過去最多になりました。背景にあるのは、食材や光熱費、人件費の上昇分を価格に転嫁できない中小・零細の店の苦戦です。苦しくなる前に打つ手は、人が辞めない体制を先につくること、採用を困ってからでなく年間で計画すること、集客の受け皿を調子のいいうちに整えること、値決めと数字を毎月見直すことです。
「飲食店の倒産が過去最多」。ここ数年、こうしたニュースを目にすることが増えました。自分の店は大丈夫だろうか、と不安になった経営者の方も多いと思います。
私たちは店舗の採用を支援しながら、自分たちでも店舗を運営しています。代表の中野谷は、独立する前に求人広告の営業をしていた頃のことを、今でもよく思い出すそうです。
代表・中野谷のひとこと
元々、求人広告の営業や企画をやっていたんですけど、最初の年に出会った飲食店で、今もまともに残っているイメージが本当にないんです。いちばん最初に受注した企業は思い出深いんですけど、1年後に行ったら、もうなかった。
(YouTube「【残酷な真実】飲食店の倒産過去最大で何が起きてた?集客と採用で苦戦している理由とは」より)
この記事では、飲食店の倒産が増えている背景を一次データで確かめたうえで、苦しくなる前に集客と採用で打っておきたい手を整理します。
数字で見る: 飲食店の倒産は過去最多が続いている
2025年に発生した飲食店の倒産は900件で、前年の894件を上回り過去最多を更新しました。3年連続の増加です(出典: 帝国データバンク「『飲食店』の倒産動向(2025年)」2026年1月13日)。帝国データバンクの集計の対象は、負債1000万円以上の法的整理による倒産です。
2026年に入っても勢いは止まっていません。2026年上半期(1〜6月)の飲食店の倒産は473件で、前年同期の458件を上回り、上半期として過去最多を更新しました。4年連続の増加です。負債5000万円未満の小規模な倒産が369件と、全体の78.0%を占めています(出典: 帝国データバンク「『飲食店』の倒産動向(2026年上半期)」2026年7月22日)。業態別では、居酒屋を中心とする「酒場・ビヤホール」が125件で最も多くなっています。
この数字は法的整理による倒産だけを数えたもので、自主的な閉店や廃業は含まれていません。表に出ない店じまいを含めれば、苦しんでいる店はもっと多いと考えるのが自然です。
背景: コストが上がっても、値段に乗せられない
帝国データバンクは、背景として、食材・光熱費の高騰や賃上げなどで利益が圧迫されていること、原材料価格や人件費の上昇分を思うように価格に転嫁できない企業の苦戦が続いていることを挙げています。そのうえで、大手チェーンと違ってスケールメリットが乏しく、価格転嫁に踏み切れない中小規模の飲食店の業況悪化が見られ、規模間の格差が広がっているとしています(出典: 同「『飲食店』の倒産動向(2026年上半期)」)。
人件費の上昇は、これからも続きます。2026年度の地域別最低賃金は全国加重平均で1,177円となり、前年度の1,121円から56円上がりました(出典: 厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金全国一覧」)。
人の問題は、倒産の原因そのものにもなっています。帝国データバンクによると、従業員の退職や採用難、人件費の高騰などを原因とする「人手不足倒産」は、2026年度上半期(4〜9月)に225件と、集計を始めた2013年以降、4年連続で過去最多を更新しました(出典: 帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2026年度上半期)」2026年10月7日)。これは飲食店に限らない全業種の数字ですが、人が集まらない・辞めていくことが、店の存続に直結する時代になっています。
苦しくなる店でよく起きていること
採用の支援で多くの飲食店と関わってきて、苦しくなる店には似た流れがあると感じます。
- 売上が落ちてきたので、シフトを削って人件費を抑える
- 残ったスタッフ1人あたりの負担が増え、疲れた人から辞めていく
- 人が足りず、営業時間や席を減らす。サービスの質も落ちる
- お客様の満足が下がり、さらに売上が落ちる
この流れが始まってから集客や採用に手を打っても、効果が出るまでの時間に耐えられないことが少なくありません。集客と採用は、どちらか一方だけでは店が回らないのです。
代表・中野谷のひとこと
応募がたくさん来ても、どんどん入れ替わって、また研修を繰り返すのは結構辛いと思います。お客さんが来るかな、採用がうまくいくかなと、両方を考えないと、どっちかが潰れちゃったときに店を回すのがかなり辛くなるじゃないですか。
私たち自身、採用を本業にしていても、自分で店を運営してみるとマネジメントの難しさやトラブルの多さを痛感します。やってみて初めて分かることは多く、だからこそ、うまくいかなかったことも含めて自分たちの店で試してからお伝えするようにしています。
先に打つ手1: 人が辞めない体制を、売上が落ちる前につくる
売上が苦しいとき、真っ先に削りたくなるのが人件費です。しかし、残ってくれている人に負担を寄せ続けると、店を支えている人から辞めていきます。
帝国データバンクは、従業員の退職がきっかけとなった倒産について、コストの上昇分を価格に転嫁できないことで賃上げの原資を確保できず、事業の中核を担う人の流出を止められないケースが見られたとしています(出典: 帝国データバンク「『従業員退職型』の倒産動向(2026年1-7月)」2026年8月7日)。値段と人の問題は、つながっているのです。
辞めない体制として、まず手をつけたいのは次の3つです。
- 店長やオーナーが、報告とは別にスタッフと話す時間を定期的に取る
- 1人しかできない仕事をなくし、誰かが抜けても回るようにしておく
- 忙しい時期に、今いる人の追加出勤だけで穴を埋めない
スタッフが辞めたくなる店の特徴と、店長の関わり方はスタッフが辞めたくなる店舗の特徴で詳しく書いています。
先に打つ手2: 採用は「困ってから」ではなく、年間で決める
人が辞めてから求人を出すと、どうしても条件を上げて急いで採ることになります。しかも飲食店の求人は、年末に向けて一気に増えます。忙しい時期の直前に採ろうとするほど、競争は激しくなります。
採用は、1年のどの時期に何人必要かを先に決め、比較的採りやすい時期に動いておくのが基本です。年末に向けた準備の進め方は年末年始・繁忙期に向けた店舗運営の準備にまとめています。
広告費を増やす前に、求人の出し方を見直す余地もあります。私たちの店舗でも、同じ仕事を職種名を変えていくつかの求人に分けて出し、広告費を増やさずに応募を集めたことがあります。職種名の付け方は求人タイトル(職種名)の付け方、ホールとキッチンで求人を分ける方法は飲食店の採用のコツが参考になります。
応募が来たあとの取りこぼしも見直してください。私たちの店舗では、一次面接をAI面接にして、応募者が都合のよい時間に受けられるようにし、そのあとに代表と店舗の責任者が短く話す形にしています。店長が営業中に、面接の日程調整や一次面接に追われないようにするためです。
先に打つ手3: 集客の受け皿は、調子のいいうちに整える
集客も、困ってから始めると時間がかかります。お客様が店を調べたときに見る場所、つまり地図アプリや予約サイト、SNS、店のホームページの情報は、調子のいい時期のうちに整えておきます。
確認したいのは、次のような基本です。
- 営業時間や定休日、席数、予約の方法が、どこを見ても同じで正しいか
- メニューと価格、店内の様子が写真で分かるか
- 子ども連れや大人数など、お客様が気にしそうなことに答えているか
- 予約やお問い合わせの入口が、スマートフォンから迷わずたどれるか
こうした受け皿は、作った直後に効果が出るものではありません。だからこそ、売上に余裕があり、手を動かす時間がある時期に整えておく価値があります。
先に打つ手4: 値決めと数字を、毎月見直す
最後は値段と数字です。原価と人件費が上がり続けるなかで、価格を何年も据え置いていないでしょうか。値上げは怖い判断ですが、上げられないまま利益が削られていくと、働く人の待遇を上げる余力がなくなり、人が離れていきます。
値上げをするなら、メニューの中身や量、提供の仕方もあわせて見直し、なぜ上げるのかをお客様に伝えます。値上げだけを単独で行うより、受け入れてもらいやすくなります。
数字は、月に1回は決まった形で見ます。売上、原価、人件費、客数、客単価、そして働いている人の数と時間です。私たちの店舗では、月に1回の全員のミーティングで、月の売上目標と、スタッフが明日から動ける行動の目標を2本立てで決めています。売上の目標だけでは、スタッフが何をすればいいか分からないからです。数字を毎月見ていれば、苦しくなり始めた兆しに早く気づけます。
まとめ
- 飲食店の倒産は2025年に過去最多、2026年上半期も上半期の最多。小規模な店が中心で、コストの上昇分を価格に転嫁できないことが背景にある
- 苦しくなる店は、人件費を削る→残った人が疲れて辞める→営業が縮む→売上が落ちる、という流れに入りやすい。集客と採用は両方を見る
- 先に打つ手は、人が辞めない体制、年間で決める採用、調子のいいうちに整える集客の受け皿、毎月の値決めと数字の見直し
次の一歩は、この1年で値段を見直したかどうかと、直近3か月の人件費と働いた人数を並べてみることです。数字が苦しくなり始めているなら、手を打つのは今です。
よくある質問
飲食店の倒産が増えているのはなぜですか?
帝国データバンクは、食材や光熱費の高騰、賃上げによる人件費の上昇で利益が圧迫されているのに、その分を価格に転嫁できない中小規模の店の苦戦を挙げています。倒産の多くは負債の小さい小規模な店で、規模による差が広がっているとしています。
人手不足は、飲食店の経営にどう影響しますか?
人が足りないと営業できる時間や席が減り、売上が落ちます。採用のために時給を上げれば人件費が増え、値上げできなければ利益が残りません。中心になっていた人が辞めて店が回らなくなるケースもあるので、採用と同じくらい、今いる人が辞めない体制が大切です。
経営が苦しくなる前に、何をしておけばよいですか?
調子のいい時期のうちに、店の情報を正しく伝える場所と予約の受け皿を整え、採用を年間の計画にしておくことです。苦しくなってから集客や採用を始めると、効果が出るまでの時間に耐えられないことが多くなります。
値上げをすると、お客様が離れてしまいませんか?
離れるお客様が出ることはあります。ただ、上がり続ける原価や人件費を吸収できないままだと、働く人の待遇を上げる余力がなくなり、人が離れていきます。値上げをするなら、何が変わるのか、なぜ上げるのかを伝え、メニューや提供の仕方もあわせて見直します。