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損益分岐点の出し方|店舗の固定費・変動費の分け方と1日の目標客数

この記事の結論

損益分岐点は、売上と費用がちょうど同じになり、利益がゼロになる売上のことで、「固定費÷(1−変動費率)」で計算できます。店舗では家賃や社員の給与を固定費、食材・材料や決済の手数料を変動費に分けて計算し、営業日数と客単価で割って「1日に何人のお客さまが必要か」まで落とすと、毎日の目標として使えます。

「今月はこのくらい売れたけれど、本当に利益は出ているのだろうか」。店舗を経営していると、月末に通帳や試算表を見るまで分からない、ということがよくあります。その不安を、営業している最中に確かめられる数字に変えてくれるのが損益分岐点です。

この記事では、損益分岐点の考え方と計算式、店舗の費用を固定費と変動費に分ける方法、計算した数字を1日あたりの売上と客数まで落とす手順を、公的な資料と仮の数字でまとめます。後半では、残したい利益から必要な売上を逆算する考え方と、損益分岐点を下げるときの注意を、自分たちも店舗を運営する立場から書きます。

損益分岐点とは:利益がちょうどゼロになる売上

損益分岐点とは、売上と費用がちょうど同じになり、利益がゼロになる売上の規模のことです。その売上の金額を、損益分岐点売上高といいます。実際の売上がこれを上回れば利益が出て、下回れば損失になります(出典: 中小企業基盤整備機構 J-Net21「損益分岐点の計算方法と経営改善に向けた活用方法を教えてください。」2026年10月確認)。

計算の前に、費用を二つに分けます。

  • 固定費: 売上に関係なく、毎月ほぼ同じ額がかかる費用(家賃、社員の給与など)
  • 変動費: 売上が増えるほど増える費用(食材・材料、決済の手数料など)

売上から変動費を引いた残りを、限界利益といいます。お客さまが1人来るたびに生まれる、固定費の支払いにあてられるお金です。限界利益の合計が固定費と同じになったところが、損益分岐点です。

損益分岐点売上高の計算式

損益分岐点売上高は、次の式で出せます。

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)

変動費率は、変動費を売上で割った割合です。1から変動費率を引いた値を限界利益率と呼ぶので、「固定費÷限界利益率」と書かれることもあります。

J-Net21の例題は、次のような店を考えています。

例題の条件 数字
商品1個の仕入れ値 800円
商品1個の売値 1,000円
1個あたりの限界利益 200円
固定費(家賃+販売員の人件費) 30万円(20万円+10万円)
利益がゼロになる販売個数 1,500個(30万円÷200円)
損益分岐点売上高 150万円(1,000円×1,500個)

(出典: J-Net21 同ページ)

同じページは、実際の企業では費用を固定費と変動費にはっきり分けるのは難しいので、実状に合わせて簡便的に分けて活用すればよい、としています(出典: 同ページ)。完璧に分けることより、毎月同じ分け方で計算し続けることのほうが大切です。

店舗の費用を、固定費と変動費に分ける

店舗の費用を分けると、おおむね次のようになります。迷うものは、どちらかに決めて毎月同じ扱いを続けます。

費用 分け方の目安 迷いやすい点
家賃・共益費 固定費 売上に連動する家賃なら、その部分だけ変動費
社員の給与・会社負担の社会保険料 固定費 賞与は月割りにして入れる
アルバイト・パートの給与 固定費として扱うのが安全 店を開けている間に最低限置く人数の分は、売上がなくてもかかる
食材・材料・物販の仕入れ 変動費 仕入れた額ではなく、棚卸しで出した使った額
カード・QRコード決済の手数料 変動費
予約サイト・デリバリーの成果報酬 変動費 月額の掲載料は固定費
広告費 固定費として月ごとに予算を決める 成果報酬型の広告は変動費
水道光熱費 固定費に寄せる 飲食店は売上によってやや動く
リース料・借入の利息 固定費 元本の返済は費用ではない
フランチャイズのロイヤリティ 売上に対する率なら変動費 定額なら固定費

アルバイトの人件費は、シフトで増減させるので変動費とする考え方もあります。ただ、店を開けている以上、暇な日でも最低限の人数は置くことになり、その分は売上に関係なくかかります。私たちは、固定費に寄せて計算したほうが、損益分岐点を甘く見積もらずに済むと考えています。

計算した数字を、1日の売上と客数に落とす

損益分岐点売上高は、月の数字のままでは現場で使いにくいので、営業日数で割って1日あたりの売上にし、さらに客単価で割って1日あたりの客数にします。飲食店と予約制のサロンの二つを、仮の数字で計算してみます。

項目 飲食店(仮) サロン(仮)
月の固定費 150万円 110万円
変動費率 35% 10%
損益分岐点売上高 約231万円(150÷0.65) 約122万円(110÷0.9)
月の営業日数 25日 26日
1日あたりの売上 約9.2万円 約4.7万円
客単価 2,500円 8,000円
1日あたりの客数 約37人 約6人

この飲食店なら、1日に37人ほど来てもらって、ようやく利益がゼロになる計算です。損益分岐点の客数が分かると、朝の時点の予約や昼までの来店数を見て、「今日はあと何人」と考えられるようになります。毎朝の数字の確かめ方は、店舗の数字を毎日見る習慣にまとめています。

予約制の店では、もうひとつ確かめておきたいことがあります。損益分岐点の客数が、席と人の数で受けられる上限に対してどのあたりにあるかです。上限のすぐ近くまで埋めないと利益が出ないなら、集客を増やしても伸びしろは小さく、単価や席の使い方を見直す必要があります。上限の出し方は、店舗の売上目標の立て方で解説しています。

残したい利益から、必要な売上を逆算する

損益分岐点は、赤字にならないための最低限の売上です。経営の目標にするなら、残したい利益を足して逆算します。

必要な売上 =(固定費 + 残したい利益)÷(1 − 変動費率)

この順番で考えると、使えるお金の枠が先に決まります。代表の中野谷も、この順番で考えることを教わって、スタッフの昇給の決め方を考え直すきっかけになったと話しています。

代表・中野谷のひとこと

このくらい売上を目標にしてて、現実ラインはこの辺だよね、っていうラインってあるじゃないですか。そこをしっかりまず決めて、その後に、絶対かかる固定費を決めて。次に、利益をいくら残したいかを決めたら、残りの出費額が決まるよって言われて。その出費額を見て、そこからスタッフへの昇給分をちゃんと決めないといけないんだろうなと思って。

売上の目標から、固定費と残したい利益を引いた残りが、人への上乗せや広告に使える額になります。先に使ってから残りを利益にする順番だと、利益はいつまでも「余ったら」のままです。人件費をどこまでかけられるかの考え方は、人件費率の目安と計算方法と店舗の人件費の考え方で解説しています。

借入金がある店は、元本の返済にも注意します。元本の返済は損益の計算上の費用には入りませんが、お金は毎月出ていきます。返済に回すお金も含めて、残したい利益を決めておきます。

損益分岐点比率で、売上が落ちたときの余裕を知る

実際の売上に対して、損益分岐点売上高がどのあたりにあるかを表すのが、損益分岐点比率です。

損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上 × 100

この比率は、低いほど売上の減少に強いとされます。日本政策金融公庫の手引きは、次のような例で説明しています。

損益分岐点比率 利益を確保できる売上の減り方(公庫の手引きの例)
90%の企業 売上の減少が10%未満まで
70%の企業 売上の減少が30%未満まで

(出典: 日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査 利用の手引き」2026年10月確認)

J-Net21も、実際の売上が損益分岐点をどれだけ上回っているかを表す指標として、安全余裕率を紹介しています。

同じ公庫の2025年度の調査で、店舗の業種の損益分岐点比率を見ると、次のとおりです。

業種 平均値 黒字かつ自己資本プラスの企業の平均 中央値
一般飲食店 104.5% 95.7% 101.3%
酒場、ビヤホール 103.8% 94.9% 100.9%
喫茶店 104.6% 95.4% 99.6%
美容業 103.0% 96.0% 100.4%
エステティック業 113.8% 98.2% 100.1%

(出典: 日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」2025年度 飲食店・宿泊業/サービス業の業種別経営指標・2026年10月確認。この調査は、売上原価を変動費、それ以外の営業経費と支払利息を固定費とみなして計算しています)

中央値は、どの業種も100%前後です。黒字かつ自己資本プラスの企業の平均のデータでも、90%台の後半にとどまります。公庫は、営業外の収入を計算に入れられないなど、調査の項目に限界があると断っています。それでも、小さな店の多くが損益分岐点のすぐ近くで営業していることは読み取れます。売上が少し落ちただけで赤字に転じやすい、ということです。

損益分岐点を下げる4つの手と、人を減らすときの注意

J-Net21は、目標の利益を達成する方法として、損益分岐点を上回る販売数量を達成すること、そして損益分岐点を下げることを挙げ、下げる方法として、販売価格を上げる、変動費率を下げる、固定費を削減する、の三つを示しています(出典: J-Net21 同ページ)。店舗に置き換えると、次の4つです。

  1. 客数を増やす(損益分岐点を超える売上をつくる)
  2. 価格を上げる、客単価を上げる
  3. 食材・材料のロスや手数料を減らして、変動費率を下げる
  4. 家賃や契約を見直して、固定費を減らす

同じページは、同じ額の利益を増やすのでも、固定費の削減は損益分岐点への影響が大きい、とも書いています。ここで店舗が気をつけたいのが、人件費を固定費として減らすときです。人を減らせば損益分岐点は下がりますが、受けられるお客さまの数、つまり売上の上限も一緒に下がります。忙しい時間に手が足りず、予約を断ったり、提供が遅れてお客さまが離れたりすれば、下げたはずの損益分岐点にも届かなくなります。

私たちの店舗では、人が足りない時期は集客の広告を止め、人がそろってから広告を出して予約を埋める順番にしています。受けきれない時期に広告費をかけても、売上にならずに固定費だけが増えるからです。固定費を見直すなら、まず家賃や使っていない契約、効果の見えない掲載料から。人については、減らすより、いまいる人で受けられるお客さまの数を増やす方向で考えます。

まとめ

  • 損益分岐点は、利益がちょうどゼロになる売上。損益分岐点売上高 = 固定費 ÷(1 − 変動費率)
  • 店舗の費用は固定費と変動費に分け、迷うもの(アルバイトの人件費など)は毎月同じ扱いを続ける
  • 営業日数と客単価で割って、1日あたりの売上と客数まで落とすと、毎日の目標になる
  • 目標にするなら、残したい利益を足して逆算する。人を減らして損益分岐点を下げるときは、売上の上限も下がることに注意する

まずは先月の費用を、一つずつ固定費と変動費に分けてみてください。それだけで、自店の損益分岐点と、1日に必要なお客さまの数が出ます。

よくある質問

損益分岐点とは何ですか?

売上と費用がちょうど同じになり、利益がゼロになる売上のことです。実際の売上がこれを上回れば利益が出て、下回れば損失になります。

損益分岐点売上高はどうやって計算しますか?

費用を、売上に関係なくかかる固定費と、売上に応じて増える変動費に分けます。そのうえで、固定費を「1から変動費率を引いた値」で割ります。変動費率は、変動費を売上で割った割合です。

アルバイトの人件費は固定費ですか、変動費ですか?

シフトで増減させている店でも、店を開けている間に最低限置く人数の分は売上に関係なくかかるので、固定費として扱うほうが損益分岐点を甘く見積もらずに済みます。どちらに入れるかを決めたら、毎月同じ分け方を続けることが大切です。

損益分岐点を下げるには、どうすればよいですか?

価格を上げる、変動費率を下げる、固定費を減らす、のいずれかです。ただし、人を減らして固定費を下げると、店が受けられるお客さまの数も減ります。値付けとメニューの見直しから考え、固定費は家賃や使っていない契約から見直します。

借入金の返済は、損益分岐点の計算に入りますか?

元本の返済は費用ではないので、損益分岐点の計算そのものには入りません。ただし、お金は毎月出ていくので、返済がある店は、返済に回すお金も含めて、残したい利益を決めておきます。

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