スタッフが辞めたくなる店舗の特徴|離職を減らす店長の関わり方
この記事の結論
スタッフが辞めたくなる店舗に共通するのは、仕事そのものより、人間関係のつまずきに誰も気づけない、休みの日にも仕事の連絡が来る、休憩できる場所がない、この先の道が見えない、といった毎日の関わり方と環境の問題です。離職を減らすには、店長が報告を待たずに話す場を定期的に持ち、連絡の時間と休める場所を整え、1人が辞めたときに次が続かない段取りを決めておきます。
店舗を運営していると、ある程度の入れ替わりは避けられません。私たちも自分たちで店舗を運営していて、正直に言えば、辞めていく人は一定数います。困るのは、仕事を覚えて店を支えてくれている人が、ある日「辞めます」と言い出すことです。
入ったばかりの新人が続かない問題は新人がすぐ辞める店舗の共通点と、3ヶ月のオンボーディング設計で扱いました。この記事では、すでに働いているスタッフが辞めたくなる店舗の特徴と、それを防ぐ店長の関わり方をまとめます。自分たちの店で試してうまくいったことだけでなく、失敗したことも書いておきます。
辞める理由の上位は、人間関係・働く条件・収入
まず全体の傾向です。厚生労働省の令和7年雇用動向調査で、転職した人が前の職場を辞めた理由を見ると、個人的な理由や定年・契約満了などを除いた中では、「職場の人間関係が好ましくなかった」が男性8.9%・女性11.5%でした(出典: 厚生労働省「令和7年雇用動向調査結果の概況」表5)。並んで多いのが「給料等収入が少なかった」(男性9.9%・女性8.6%、出典は同じ表5)と、「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」(男性8.5%・女性12.9%、同表5)です。
店舗の業種は、そもそも人の出入りが多い業種でもあります。同じ調査で、宿泊業・飲食サービス業の離職率はパートタイム労働者で25.0%、一般労働者で21.5%でした(出典: 厚生労働省 報道発表 2026年8月31日)。全体の離職率は13.7%です(同じ報道発表のデータ)。
代表の中野谷は、店舗の定着について「辞める理由の多くは人間関係にある。逆に言えば、人間関係が良ければ人は辞めない」と考えています。給料や条件は求人の段階で見えますが、人間関係は入ってからでないと分かりません。だからこそ、店長の関わり方で差がつきます。
特徴1: 落ち込んでいることに、店長もオーナーも気づけない
お客様にきつい言葉を言われた、ミスをして先輩に強く注意された、売上の目標に届かず自分を責めている。辞めたくなるきっかけの多くは、こうした小さなつまずきです。そして本人は、それをなかなか言葉にしません。
代表・中野谷のひとこと
本当に落ち込んでいるって、なかなか言わないじゃないですか。今日こういうことがありましたと1行で書いてあっても、こっちは気づけなかったり、大丈夫かなくらいで終わっちゃう。だからリアルの会話は、すごく大事だなと思っています。
私たちの店舗でも日報は書いてもらっていますが、アルバイトのスタッフの様子は、店長を通して上がってくるのが基本です。この形だと、店長が気づいてフォローしていれば救えますが、店長が気づけなかったことは、オーナーにはまず届きません。報告が2段、3段と重なるほど、伝言ゲームのように一番大事な温度が抜けていきます。
打ち手は、報告とは別に「話す場」を決めておくことです。
- 間隔は、月に1回では遅い。小さな不満は1か月あれば十分に大きくなります。私たちは社員とは毎週、面談の時間を取るようにしています
- 文面で重い話を送ると、受け取る側はさらに重く受け止めがちです。大事な話ほど、顔を見て話します
- アルバイトとは、シフトの終わりの数分で「最近どう?」と聞くだけでも違います
もう1つ大事なのは、店長が全員と深く話そうとしないことです。人数が増えると、1人で全員の様子を見るのは無理があります。店長が直接話す相手を決め、その人たちがまた自分の近くのスタッフと話す。この連鎖をつくっておくと、店長の目が届かない場所の変化も上がってくるようになります。
特徴2: 休みの日や夜にも、仕事の連絡が届く
オーナーや店長は、思いついたときに連絡を送りがちです。夜中に「あれやっておいて」、朝いちばんに業務連絡の連投。送る側に悪気はなくても、受け取る側は休みの日まで気が休まりません。
代表・中野谷のひとこと
従業員として働いてもらっているなら、働いているスタッフの満足度はある程度上げなきゃいけないと思っています。休みの日にポンとLINEを送ったり、仕事が終わって寝る前に送ったりすると、モチベーションが下がっちゃうじゃないですか。そのモチベーション管理も含めて、店舗経営だと思います。
(YouTube「【危険】放置すると即崩壊?スタッフが辞めたくなる店舗の特徴とは」より)
私たちの店舗では、どうしても勤務時間の外に送るときは「これは今見なくて大丈夫です」と必ず添えるようにしています。そのうえで、店のルールとして次のことを決めておくと楽になります。
- 急ぎでない連絡は、相手の次の勤務時間まで待つ(送信予約の機能を使う)
- 本当に急ぎの連絡(シフトの欠員など)だけを流す連絡先を分ける
- 飲み会や休日の集まりは自由参加にする。参加が当たり前になると、負担に感じる人もいます
距離が近いことと、休ませないことは別物です。仕事以外で接点を持つのはよいことですが、断っても角が立たない形にしておきます。
特徴3: 休憩できる場所と、荷物を置く場所がない
店舗は、お客様から見える場所には手をかけます。一方で、スタッフの着替えや荷物置き、休憩の場所は後回しになりがちです。荷物は段ボールの横に置くしかない、休憩のたびに店の外へ出るしかない。こうした小さな不便は毎日のことなので、じわじわ効いてきます。
私たちの店舗では、店をつくる段階でスタッフルームをきちんと確保しました。代表の中野谷は採用の仕事を長くしてきましたが、得意だったのは応募を集めるほうで、定着の視点で店の設計を考えたことはあまりなかったそうです。実際に店を運営してみて、スタッフルームがしっかりあって良かったと感じています。
これから店をつくる、改装するなら、休憩・着替え・荷物の場所を図面の段階で決めてください。すでにある店なら、まず今のスタッフに「休憩のとき、どこで何をしているか」を聞いてみることです。休める場所があることは求人でも安心材料になるので、求人の写真で見せるのも手です。
特徴4: 入る前に聞いた話と、入ってからが違う
代表の中野谷がよく話すのは、応募が来やすい仕事ほど辞めやすい、ということです。楽しそうなイメージで応募してきた人ほど、実際の仕事との差に気づいたときに離れてしまう。逆に、大変そうに見える仕事でも、中身を理解したうえで来た人は長く続きます。大切なのは、仕事の中身をどこまで正直に伝えているかです。
求人や面接では、1日の流れを具体的に書いて見せるのが効きます。接客だけでなく、片付けや売上の目標、お客様への提案など、入ってから「聞いていない」と言われそうなことほど先に出しておきます。入社して数か月で起きるずれの防ぎ方は、冒頭の新人の記事でも触れています。
慣れてきたスタッフの場合は、任される仕事が増えたのに、評価も時給も変わらないことがずれになります。何ができるようになったら何が変わるのかを、言葉にしておいてください。
特徴5: 続けた先の道が見えない
仕事に慣れたスタッフが辞める理由で見落とされやすいのが、「この店にいても、この先が見えない」です。店長を任せた人がもっと人を育てる仕事をしたいと思ったとき、1店舗のままでは次の役割を用意できません。辞めてほしくない人ほど、新しい仕事を任せていく必要があります。
私たちは、店舗で働く人が本人の希望に応じて採用支援などの仕事へ移れる道をつくっています。いきなり異動を決めるのではなく、お試しの期間を設けて、合うかどうかをお互いに確かめてから決めました。仕事やキャリアに望むことは、1on1で一人ひとりに聞いています。
店舗が1つでも、できることはあります。新人の教育係、発注、SNSの投稿など、役割を1つ任せるだけで「ここで次に何をするか」が見えるようになります。
1人辞めると、次が続く。連鎖を止める段取り
離職でいちばん怖いのは、1人の退職が次の退職を呼ぶことです。私たちの店舗でも失敗がありました。退職が決まったスタッフに、入れ替わりで入った新人の教育を任せたところ、教わった新人も続かなかったのです。辞めることが決まった人の気持ちは、隣で教わる人にもそのまま伝わります。
それからは、新人には先に代表から会社がどんなことをしているのかを細かく直接話し、そのうえで店に入ってもらうようにしました。教える人が足りないときは、店の外の研修も使いました。
連鎖は、店の経営そのものも揺らします。帝国データバンクの調査では、従業員や経営幹部の退職がきっかけとなった「従業員退職型」の倒産は、2026年1〜7月で83件と前年同期の74件を上回り、2022年以降5年連続で増えています。業種ではサービス業が最も多く、美容室などでの発生が目立ったとしています(出典: 帝国データバンク「『従業員退職型』の倒産動向(2026年1-7月)」2026年8月7日)。
退職の連絡を受けたら、次の3つをすぐに決めてください。
- 新人の教育係を、残る人に移す
- その人しかできない仕事を書き出し、引き継ぐ相手と期限を決める
- 抜けた穴を、残っている人の追加出勤だけで埋めない
3つ目を放っておくと、今度は残ってくれている人が疲れて辞めていきます。シフトの穴の埋め方は店舗の定着率を上げるシフト設計、働く時間の選択肢を増やして人手不足をしのぐ方法は時短勤務・短時間シフトでスタッフ不足を乗り切るで解説しています。
定着しているかどうかは「紹介」に表れる
最後に、店の居心地を測る分かりやすい物差しがあります。スタッフが知り合いに「うちの店で働かない?」と声をかけてくれるかどうかです。
私たちの店舗でも、スタッフに知り合いの紹介をお願いしたところ、「うちの店はちょっと」と言われた時期がありました。そこから話す場や働く環境を少しずつ整えて、いまはスタッフの紹介で入ってくれる人が出てきています。スタッフは、自分の店を良いと思っていなければ紹介しません。紹介が出るようになったら、店の中が良い方向に変わってきたしるしです。紹介の仕組みの作り方はリファラル採用の始め方を参考にしてください。
まとめ
- 辞める理由の上位は人間関係・働く条件・収入。人間関係は数字に出ないぶん、店長の関わり方で差がつく
- 落ち込みは報告に上がってこない。報告とは別に話す場を月1回より短い間隔で持ち、店長が直接話す相手を決める
- 休みの日の連絡を控え、休める場所を整え、入る前と後の差を小さくし、続けた先の役割を用意する
- 退職が決まったら、教育係を移し、その人しかできない仕事を引き継ぎ、残る人に負担を寄せない
次の一歩は、この1か月で店長が「仕事の報告以外」でスタッフと話した回数を思い出してみることです。すぐに思い出せないなら、来週のシフトの中に、話す時間を先に入れてください。
よくある質問
スタッフが辞めたくなる店舗には、どんな特徴がありますか?
落ち込んでいることに店長もオーナーも気づけない、休みの日や夜に仕事の連絡が届く、休憩や着替えの場所がない、入る前に聞いた話と実際が違う、続けた先の道が見えない、の5つが代表的です。どれも給料より先に、毎日の関わり方と店の環境で直せるものです。
アルバイトやパートが店を辞める理由で多いのは何ですか?
厚生労働省の雇用動向調査では、個人的な理由や契約満了などを除くと、職場の人間関係、労働時間や休日などの条件、収入が上位に並びます。人間関係は数字に出にくいぶん、店長が普段から話す場を持っているかどうかで差がつきます。
店長は、離職を減らすために何から始めればよいですか?
自分が直接話す相手を決めて、報告とは別に話す時間を定期的に取ることからです。日報や業務連絡には、本当に落ち込んでいることはなかなか書かれません。間隔は月に1回より短いほうが、小さな不満が大きくなる前に拾えます。
退職が決まったスタッフに、新人の教育を任せてもよいですか?
できれば避けてください。辞めることが決まった人の気持ちは、教わる新人にも伝わります。教える役は残る人に移し、足りなければ店長や外部の研修で補うほうが、新人が続きやすくなります。
休みの日のスタッフに、仕事の連絡をしてはいけませんか?
急ぎでない連絡は、相手の勤務時間まで待つのが基本です。どうしても送るなら「今は見なくて大丈夫です」と添え、送る時間を予約できる機能も使います。休みの日に気が休まらない職場は、それだけで辞める理由になります。