店舗の売上目標の立て方|月商と、スタッフが動ける数字の2本立て
この記事の結論
店舗の売上目標は、月商だけで終わらせず、スタッフが明日からの行動に落とせる数字(行動目標・KPI)を2〜3個セットで置くと動き始めます。月商は席と人と営業日から上限を分解し、予約が足りないのかシフトが足りないのかを切り分けたうえで、過去の同じ月と営業日数を見ながらスタッフと一緒に決めます。
店舗の売上目標を立てて、毎月スタッフに伝えている。それなのに、月末に数字を見ると「足りなかったね」で終わってしまう。そういう店は少なくありません。私たち自身も、自分たちの店舗の目標の決め方には何度も迷ってきました。
結論から言うと、月商の目標だけでは、スタッフは明日何をすればいいかが分かりません。私たちの店舗では、目標を「月商」と「スタッフが自分の行動で動かせる数字(行動目標・KPI)」の2本立てにしてから、月1回のミーティングの中身が変わりました。この記事では、月商の決め方、行動目標の選び方、決めた目標の共有と振り返りまでを、自社店舗で試してきた順番でまとめます。
月商だけの目標では、スタッフは動けない
月商は、経営者にとってはいちばん大事な数字です。家賃も人件費も、ここから払います。ただ、店に立つスタッフから見ると、月商は「結果」でしかありません。今日の予約が何件入るかは、スタッフ一人ではほとんど決められないからです。
月商だけを目標にしていると、月末のふりかえりで出てくる感想は「売上が足りなかった」「お客さまが少なかった」になりがちで、次の月に何を変えるかの話に進みません。
代表・中野谷のひとこと
お尻を叩かれないとやらないな、と思って。売上目標ですら、ふんわり決めていたんですけど、誰かに見られているわけじゃないので、自分の中で納得して終わってるじゃないですか。それじゃダメだなと思って。
経営者が一人で決めた目標は、経営者の頭の中で完結しがちです。私たちは、月1回の全員参加のミーティングで目標を決める形に変えました。人前で決めた数字は、決めた人の数字になります。
月商は「上限」から分解して決める
月商の目標を決める前に、まず「いまの体制で、予約が全部埋まったらいくらになるか」という上限を出します。施術や接客で売上が立つ店なら、上限はおおむね次の掛け算で決まります。
| 要素 | 見るもの |
|---|---|
| 席(ベッド・チェア)の数 | 同時に何人のお客さまに対応できるか |
| 出勤しているスタッフ | 席を動かせる人が、どの曜日・時間帯にいるか |
| 時間あたりの売上 | メニューの単価を所要時間で割った額 |
| 営業日数 | 翌月の定休日・臨時休業・連休を引いた日数 |
仮に、席が2つ、1席あたり1日に3万円分の予約が入れられて、翌月の営業日が25日なら、上限は仮の計算で150万円です(2席×3万円×25日)。実際の月商は、この上限のうちどれだけ予約で埋まるかで決まります。
上限を出すと、目標に届かない理由が2つに分かれます。予約が足りないのか、そもそもシフトが足りないのか、です。
代表・中野谷のひとこと
今の数字っていうのは、予約が少ないからそうなっちゃってるのか、シフトが少ないからそうなっちゃってるのか、どっちなのかなと思って。予約さえ入れば、今のシフトでどのぐらいが目指せる範囲なのか。
予約が足りないなら、打ち手は集客です。シフトが足りないなら、採用か、いまいるスタッフの出勤の組み方を見直すことになります(組み方は店舗の定着率を上げるシフト設計も参考にしてください)。同じ「売上が足りない」でも、やることがまったく違います。私たちの店舗では、人が足りない時期は広告を止め、人がそろったタイミングで広告を出して予約を埋める、という順番で動かしています。人が足りないまま集客だけ増やすと、予約を受けきれず、お客さまにもスタッフにも負担がかかるからです。シフトと人件費の考え方は店舗の人件費の考え方で詳しく書いています。
過去の同じ月と、翌月の営業日数を見る
上限が出たら、次は「届きそうな数字」に寄せます。ここで見るのは、過去の同じ月の実績と、翌月の営業日数です。
店の売上には季節の波があります。私たちの店舗でも、夏に伸びて、秋から冬に向けて落ちていく業態があり、毎月同じ数字を置いても意味がありません。前の月と比べるより、去年の同じ月や、季節が近い月と比べたほうが、現実的な数字になります。
営業日数も、思っている以上に効きます。臨時休業や研修で店を閉める日があれば、その分だけ上限が下がります。私たちが実際にミーティングで目標を決めたときも、画面に過去の月の実績と翌月の営業日数を出して、それを見ながら数字を置きました。逆に言えば、この2つを手元に用意せずに目標を決めると、根拠のない数字になります。
行動目標・KPIは「数えられて、自分で動かせるもの」を2〜3個
月商が決まったら、スタッフの行動に落ちる数字をセットで置きます。選ぶ基準は3つです。
- 数えられること(あとで達成したかどうかを誰でも判断できる)
- 店のスタッフが自分の行動で動かせること
- 毎日か毎週、途中経過を確かめられること
私たちの店舗で実際に置いてきたのは、次のような数字です。
| 行動目標・KPIの例 | 何につながるか |
|---|---|
| 新規のお客さまの次回予約の数・率 | リピートの土台になる |
| 物販(ケア用品など)の個数 | 客単価を上げる |
| SNSの投稿本数 | 広告や検索で見つけてもらう材料になる |
| 口コミをお願いした人数 | 新規のお客さまが店を選ぶ材料になる |
代表の中野谷は、ミーティングで「行動目標はKPIでもいいし、物販を何個でもいい。その月が終わる時点で、翌月の予約がいくつ埋まっているか、という目標でもいい」と話しています。大事なのは、言われた瞬間に何をすればいいかが分かる数字であることです。
注意したいのは、数えにくい指標です。たとえば次回予約は、予約をその場で入れたか、あとから電話で入ったかで数え方が揺れます。数えにくい指標を選ぶなら、どこに記入して、誰が数えるかまで先に決めておきます。私たちの店舗でも、次回予約の数字が下がった月には、本当に取れていないのか、記入欄の書き漏れなのかを確かめるところから話を始めました。数字が落ちたときに、まず人を疑うのではなく、記録の取り方を確かめる順番にしておくと、責める空気になりません。
目標は、スタッフに出してもらう
数字は、こちらから押しつけずに、スタッフに出してもらっています。経営者が決めた数字より、自分たちで出した数字のほうが「自分の目標」になるからです。
ただ、スタッフから出てくる数字は、控えめになりがちです。そういうときは、スタッフからは見えにくい事情を材料として出します。翌月は広告を増やす、新しい人が入って夜の時間帯が開く、といった事情です。それを聞いたうえで、少し上を目指すかどうかを一緒に決めます。上乗せするときは、必ず理由を添えます。
行動目標は、一人ずつに割り振るところまで決めると、さらに動きます。店全体で物販を何個、と決めても、シフトの多い人と少ない人では売れる数が違います。誰が何個やるかを決めておかないと、「自分はやったのに」という不公平感が残ります。
決めた目標は、全員が毎日見る場所に置く
ミーティングで決めた目標は記録して、出席できなかったスタッフにも共有します。月1回のミーティングに全員がそろうことは、店舗ではまずありません。
そのうえで、毎日目に入る場所に置きます。私たちの店舗では、スタッフが毎日の報告を入れる画面のいちばん上に、今月の目標と途中経過が出るようにしました。報告のたびに目に入るので、月の途中で「あと何をどれだけ」が自然に話題になります。毎朝何を見て、どう共有するかは店舗の数字を毎日見る習慣にまとめました。
月末のふりかえりは「責めない」と決めておく
翌月のミーティングでは、最初に前月の目標と結果を並べます。ここで決めているルールは1つだけです。できなかった項目は、何が詰まっていたかだけを共有して、責めないこと。
ここは私たちの失敗談でもあります。ある月、ミーティングの資料に前月の行動目標の結果を書く欄を置き忘れ、ミーティングの最後にスタッフに言われて気づきました。決めた目標をふりかえらないと、目標を決める場そのものが軽くなります。それからは、前月に決めた行動目標と結果の欄を、資料の数字のページに必ず置くことにしました。
ふりかえりのあとは、翌月の目標を決めて、最後はお互いを褒め合って終わります。数字の話のあとに、相手のよかったところを伝える時間を入れておくと、厳しい月でもいい空気のまま解散できます。この締め方はスタッフどうしの「ありがとう」を仕組みにするで詳しく紹介しています。
まとめ
- 月商の目標だけでは、スタッフは明日の行動を決められない。行動で動かせる数字を2〜3個セットで置く
- 月商は、席・出勤・時間あたりの売上・営業日数から上限を出し、予約不足かシフト不足かを切り分けてから決める
- 過去の同じ月と翌月の営業日数を手元に用意し、数字はスタッフに出してもらう。上乗せするときは理由を添える
- 決めた目標は毎日見える場所に置き、翌月のふりかえりでは結果を必ず並べて、責めずに詰まりだけを共有する
次の一歩として、来月の営業日数と、去年の同じ月の売上を書き出してみてください。その2つが手元にあるだけで、目標を決める会話の中身が変わります。
よくある質問
店舗の売上目標はどうやって決めればよいですか?
まず、いまの席数・スタッフの出勤・営業日数で、予約がすべて埋まったらいくらになるかという上限を出します。そのうえで、過去の同じ月の実績と翌月の営業日数を見て、届きそうな数字をスタッフと一緒に置きます。上限に届かない理由が予約不足なのかシフト不足なのかで、打ち手が変わります。
売上目標だけをスタッフに伝えるのでは足りませんか?
月商だけでは、スタッフは明日何をすればよいかが分かりません。新規のお客さまの次回予約、物販の個数、SNSの投稿本数のように、自分の行動で動かせる数字を2〜3個あわせて置くと、日々の動きに落ちます。
店舗のKPIは何を選べばよいですか?
数えられること、店のスタッフが自分で動かせること、毎日か毎週確かめられることの3つを満たすものを選びます。数えにくい指標を選ぶなら、どこに記入して誰が数えるかまで先に決めておきます。
目標は経営者が決めて伝えるべきですか、スタッフに決めてもらうべきですか?
私たちの店舗では、数字はスタッフに出してもらい、経営者は材料を出す側に回っています。広告を増やす、新しい人が入るといった、スタッフからは見えにくい事情があるときだけ、理由を添えて上乗せを相談します。
目標に届かなかった月の振り返りはどうすればよいですか?
できなかった項目は、何が詰まっていたかだけを共有して、責める場にしないことです。届かなかった理由が分かれば、翌月の目標と打ち手の材料になります。最後はできたことを褒め合って終えると、次の月も同じ場が続きます。