面接で聞いてはいけないこととは?NG質問の例と店舗で防ぐ仕組み
この記事の結論
面接で聞いてはいけないのは、本籍・出生地、家族、住まいや生活環境といった「本人に責任のない事項」と、宗教・支持政党・尊敬する人物・愛読書といった「本来自由であるべき事項」で、採否に使うつもりがなくても尋ねれば判断に影響し、就職差別につながるおそれがあるとされています。店舗の面接では雑談の延長で出やすいため、質問を先に決め、勤務できる時間など知りたいことを全員に同じ言葉で直接聞く形にするのが確実です。
面接で聞いてはいけないことがある、という話は知っていても、どこからが避けるべき質問なのかは曖昧なまま面接をしている。店長やアルバイトリーダーが面接を担う店舗では、これが実情ではないでしょうか。しかも問題になりやすいのは、悪意のある詮索より、場を和ませるつもりの雑談です。
判断の軸はシンプルです。厚生労働省は、採用選考は「応募者の基本的人権を尊重すること」と「応募者の適性・能力に基づいた基準により行うこと」の2点を基本に行うことが大切だとしています(出典: 厚生労働省「公正な採用選考の基本」2026年10月確認)。この記事では、この考え方をもとに避けるべき質問の類型を整理し、雑談で出やすい一言の言い換えと、店舗の面接で防ぐための仕組みを紹介します。
なお、本記事は公開されている考え方を紹介するもので、個別のケースの法的な判断を示すものではありません。自社の運用を決めるときは、厚生労働省や都道府県労働局の資料を確認のうえ、社会保険労務士や弁護士などの専門家に相談してください。
判断の軸: その答えを、仕事を任せられるかの判断に使うか
迷ったときは、次の一文で確かめられます。
- この質問の答えは、この人がうちの仕事を担えるかどうかの判断に、直接使うものか
「人柄を知りたいから」「雑談として」は、理由になりません。厚生労働省は、適性・能力と関係のない事項について、応募用紙に書かせたり面接で尋ねたりして把握すると、採用の基準にしないつもりでも、結果として採否の判断に影響を与えてしまい、就職差別につながるおそれがあるとしています(出典: 同上)。聞いてしまえば、聞かなかったことにはできない、ということです。
類型1: 本人に責任のない事項
本人の努力では変えられない、生まれや家庭に関わる事柄です。厚生労働省が挙げているのは次のとおりです(出典: 同上)。
- 本籍・出生地に関すること(戸籍謄本や、本籍が書かれた住民票の写しを出させることも含む)
- 家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)
- 住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近隣の施設など)
- 生活環境・家庭環境などに関すること
店舗の面接で出やすいのは、次のような一言です。
| 雑談で出やすい一言 | 当たる事項 | 代わりにどうするか |
|---|---|---|
| 「ご実家はどちらですか」 | 本籍・出生地 | 聞かない。通勤を確かめたいなら「通勤の手段と時間を教えてください」 |
| 「ご両親は何のお仕事を?」 | 家族 | 聞かない |
| 「一人暮らしですか、ご家族と住んでいますか」 | 生活環境・家庭環境 | 聞かない。勤務の可否は「入れる曜日と時間帯」で確かめる |
| 「お子さんのお迎えは何時ですか」 | 家庭環境 | 「この時間帯は勤務できますか」と、全員に同じ言葉で聞く |
| 「ご家族は、ここで働くことに賛成していますか」 | 家族 | 聞かない |
類型2: 本来自由であるべき事項(思想・信条)
個人の内面に関わる事柄です。厚生労働省が挙げているのは、宗教、支持政党、人生観や生活信条、尊敬する人物、思想、労働組合(加入状況や活動歴など)や学生運動などの社会運動、購読している新聞・雑誌・愛読書に関することです(出典: 同上)。
「尊敬する人は誰ですか」「最近読んだ本は何ですか」「どの新聞を読んでいますか」は、かつて定番の面接質問として使われていた経緯もあり、今でも残っていることがあります。人柄や価値観を知りたい意図であっても、この類型に当たります。仕事への向き合い方を知りたいなら、「前のアルバイトで忙しかったとき、実際にどう動きましたか」のように、仕事での過去の行動を聞けば足ります。
選考の「方法」にも注意する
質問だけでなく、選考のやり方にも配慮すべき点が示されています(出典: 同上)。
- 身元調査などの実施(現住所の略図を出させることも、生活環境の把握や身元調査につながる可能性があるとされています)
- 適性・能力と関係のない事項を含んだ応募書類の使用
- 合理的・客観的に必要性が認められない、採用選考時の健康診断の実施
面接を整えても、応募フォームに家族欄が残っていれば同じことです。厚生労働省は、事業主が独自に応募用紙やインターネット上の応募入力画面の項目を決める場合は、適性と能力に関係のない事項を含めないよう求めています。個人情報の面でも、職業安定法は、募集を行う者が求職者の個人情報を集めるときは、業務の目的の達成に必要な範囲で、目的を明らかにして集めることを求めています(出典: e-Gov法令検索「職業安定法」第5条の5・2026年10月確認)。
また、出自や障害、難病の有無、性的マイノリティであることなどを理由に、特定の人を排除しないことも必要だとされています(出典: 厚生労働省「公正な採用選考の基本」)。
性別・結婚・出産、年齢、そして求職者へのハラスメント
法律で決められているルールもあります。
- 性別 — 男女雇用機会均等法は、募集・採用で性別を理由とする差別を禁じています。面接の違法事例として、女性にだけ子どもが生まれた場合に働き続けるかを尋ねる、男性にだけ幹部候補になる意欲を聞く、といった例が示されています。男女に同じ質問をしていても、一方の性の回答だけを合否の判断に使うことも違法事例に挙がっています(出典: 厚生労働省「男女均等な採用選考ルール」令和8年6月作成)
- 体格・体力 — 業務上の必要など合理的な理由がないのに、身長・体重・体力を募集や採用の要件にすることは、間接差別として禁じられています(出典: 同上)
- 年齢 — 労働施策総合推進法は、募集・採用で年齢を理由とした制限を設けることを禁じています(出典: 厚生労働省「募集・採用における年齢制限禁止について」2026年10月確認)。例外の考え方と求人での書き方は「シニア採用のコツと注意点」で整理しています
- 求職者へのセクシュアルハラスメント — 2026年10月1日から、求職者に対するセクシュアルハラスメントを防ぐ措置が事業主の義務になりました。採用面接への参加も対象の場面に含まれ、オンラインでのやり取りも含まれます。方針を決めて面接官を含む従業員に周知すること、面談の時間や場所、やり取りに使うSNSなどのルールを先に決めること、相談窓口を求職者に知らせることなどが求められています(出典: 厚生労働省「男女均等な採用選考ルール」令和8年6月作成)
外国籍の方の在留資格を、選考のどの段階で、どう確かめるかは「外国人アルバイトの採用で店舗が押さえること」で解説しています。
知りたいことは、直接・全員に同じ言葉で聞く
家庭の事情や住まいを聞いてしまう背景には、たいてい「本当にシフトに入れるのか」「続けてもらえるのか」という、もっともな不安があります。
代表・中野谷のひとこと
人は変わる可能性もあるんですけど、シフトがこのくらいしか入れないとなると、教育もできないんです。だから、そこを見ている会社は多いですね。人柄は、面接でいい感じだったのに、採用してみたら全然ダメだった、ということもありますから。
確かめたいのが勤務できる時間なら、その周りの事情を探るより、「入れる曜日と時間帯を教えてください」「この時間帯は勤務できますか」と直接聞くほうが、正確な答えが返ってきます。雑談で人柄を探っても、判断に使える材料にはなりません。見るべきは、勤務できる条件と、仕事に関わる過去の行動です。
これは面接の前、求人の段階から同じです。私たちがお客様に求人原稿を書いていただくときも、性別や年齢で差をつけない書き方にだけは気をつけてください、とお伝えしています。
店舗の面接で「悪気なく聞いてしまう」を防ぐ仕組み
知識を共有しただけでは、雑談の流れで出てしまう一言は止まりません。仕組みで防ぐほうが確実です。
- 質問リストを決めておく — 面接で聞く質問を先に書き出し、リストにない踏み込んだ質問はしないと決めます。場を和ませる話題も「お店の場所はすぐ分かりましたか」「うちのお店に来たことはありますか」のように用意しておきます。そのまま使える質問の例は「アルバイト面接の質問集」にまとめています
- 応募書類とフォームを見直す — 家族欄、本籍欄、現住所の略図など、適性・能力と関係のない項目が残っていないかを確かめます
- 面接に入る人全員に一度共有する — 店長やアルバイトリーダーが面接に入る店舗ほど、共有の抜けが起きます。類型を1枚にまとめて配り、「迷ったら聞かない」と決めておきます
- 記録を残す — 面接で聞いたことを記録しておくと、あとから運用を点検できます
質問を決めておくことには、もう一つ効果があります。全員に同じ質問をするので、面接官による判断のぶれも小さくなります。厚生労働省も、面接ではあらかじめ質問項目や評価基準を決めておくよう求めています(出典: 厚生労働省「公正な採用選考の基本」)。質問と評価の物差しの作り方は「構造化面接のやり方」で、採用担当がいない会社での質問リストの作り方は「採用担当がいない中小企業の面接体制の作り方」で紹介しています。
まとめ
- 判断の材料は、応募者の適性と能力だけ。仕事を任せられるかの判断に使わない情報は、聞かない・集めない
- 避けるべきは「本人に責任のない事項」と「本来自由であるべき事項」。性別で質問を変えること、年齢による制限、求職者へのハラスメントにも法律のルールがある
- 店舗では雑談の延長で出やすい。知りたいことを直接・全員に同じ言葉で聞く形にし、質問リストと応募書類の見直しという仕組みで防ぐ
次の一歩は、いま使っている面接の質問と応募フォームを1枚に書き出し、この記事の類型に触れているものがないかを確かめることです。自社の運用として決める前には、専門家への確認をおすすめします。
よくある質問
面接で聞いてはいけないことには、どんなものがありますか?
本籍・出生地、家族のこと(職業、続柄、健康、学歴、収入など)、住まいの状況、生活環境・家庭環境といった本人に責任のない事項と、宗教、支持政党、人生観や生活信条、尊敬する人物、思想、労働組合などへの関わり、購読新聞や愛読書といった本来自由であるべき事項です。
雑談のつもりで家族のことを聞くのも、いけませんか?
避けてください。厚生労働省は、適性・能力と関係のない事項は、採否の基準にしないつもりでも把握すれば判断に影響してしまい、就職差別につながるおそれがあるとしています。場を和ませる話題は、お店の場所や来店経験など、仕事の判断に使わないものを用意しておきます。
子どもの送り迎えの時間など、勤務に関わる家庭の事情はどう確かめればよいですか?
家庭の事情そのものではなく、「この時間帯は勤務できますか」「入れる曜日と時間帯を教えてください」と、勤務できる時間を全員に同じ言葉で聞きます。女性にだけ子どもや結婚のことを尋ねるのは、男女で異なる取扱いに当たります。
応募フォームや履歴書の項目にも注意が必要ですか?
必要です。家族欄や本籍欄など、適性・能力と関係のない項目を含む応募書類を使うことも、配慮すべき選考の方法として示されています。自社で応募フォームを作るときは、適性と能力に関係のない項目を入れないようにします。