シニア採用のコツと注意点|「60歳以上歓迎」は書ける?年齢の決まりと店舗の求人の書き方
この記事の結論
60歳以上に限った募集や、年齢不問としたうえでの「60歳以上の方歓迎」の併記は、年齢制限禁止の例外として認められています。ただし「60歳以上70歳以下」のような上限付きの募集はできず、「40歳以上歓迎」のように60歳未満を含む年代を優遇する書き方も適当でないとされているため、店舗の求人では年齢の言葉より、作業量・時間帯・覚え方を具体的に書くのが基本です。
シニア層にも来てほしい。そう考えて求人に「60歳以上歓迎」と書こうとして、「年齢は書いてはいけないのでは」と手が止まったことはないでしょうか。先に結論を言うと、60歳以上を歓迎する書き方は、法令上の例外として認められています。一方で、同じように年齢に触れる言葉でも、書き方を少し変えるだけで認められなくなるものがあります。
人手を確保する打ち手として、シニア層に目を向けている企業は少なくありません。企業がアルバイトの人材確保のために実施した施策を聞いたマイナビの調査データでは、「給与の増額」(31.2%)に次いで「シニア層(65歳以上)の積極採用」(23.8%)が多く挙がっています(出典: マイナビキャリアリサーチLab「アルバイト市場 総括レポート 2026年版」2026年7月、マイナビ「アルバイト採用活動に関する企業調査」複数回答)。
この記事では、まず年齢の書き方の決まりを厚生労働省の資料で整理し、そのうえで店舗のアルバイト求人をシニア層に届ける書き方と、面接・受け入れで気をつけることをまとめます。
年齢の決まり: 原則は不問、60歳以上は例外
まず原則です。労働施策総合推進法により、労働者の募集・採用では、原則として年齢を不問にしなければなりません。パートやアルバイトなど雇用の形態は問わず、求人広告や自社の採用ページで直接募集する場合も対象になります(出典: 厚生労働省リーフレット「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?」2025年4月版)。
そのうえで、同法の施行規則は、例外として年齢制限が認められる場合をいくつか定めています。その一つ(例外事由3号ニ)が、60歳以上の高年齢者に限って募集・採用する場合です。厚生労働省のQ&Aは、60歳の定年後に継続雇用されずに離職する人がいることや、高年齢者の再就職はほかの年齢層より難しいことが多いことを、この例外を設けた理由として説明しています(出典: 厚生労働省「労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A」2025年4月1日現在)。
具体的な書き方に当てはめると、次のようになります。
| 書き方の例 | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 年齢不問(仕事の条件で書く) | 原則の形 | リーフレット |
| 年齢不問としたうえで「60歳以上の方歓迎」 | 違法とならない | Q&A Q1-2 |
| 「60歳以上歓迎」のマーク | 違法とならない | Q&A Q1-3 |
| 「60歳以上の方を募集」(60歳以上に限定) | 例外として認められる | リーフレット(例外事由3号ニ) |
| 「65歳以上の方を募集」 | 例外として認められる | Q&A Q7-2 |
| 「60歳以上70歳以下の方を募集」 | 認められない(上限を付けている) | リーフレット・Q&A Q7-3 |
| 「50歳以上の方を募集」 | 認められない(下限でも不可) | リーフレット |
| 「40歳以上歓迎」のマーク、「35歳未満の方歓迎」 | 原則として適当でない | Q&A Q1-2・Q1-3 |
押さえておきたいのは2点です。1つ目は、60歳以上を対象にするなら、上の年齢で区切らないこと。上限を付けると、より高齢で再就職がいっそう難しい人の機会を奪うことになり、例外の趣旨に合わないとされています(出典: 同Q&A)。2つ目は、60歳未満を含む年代を歓迎したり限定したりしないこと。「50代歓迎」のような書き方は、ほかの年齢層の応募を妨げるおそれがあります。
では「シニア歓迎」はどうか。厚生労働省のQ&Aには、「シニア」という言葉そのものについての記載は見当たりませんでした。ただ、シニアが何歳からを指すかは人によって違い、50代を思い浮かべる人もいます。Q&Aは、年齢制限をするときに「○歳位」「○歳前後」のようなあいまいな表現を使うことは適当でなく、誤解を招かない明確な表現にする必要があるとしています(出典: 同Q&A)。60歳以上の人を歓迎したいなら「60歳以上の方歓迎」と年齢をはっきり書くほうが、例外に沿った表現であることが読み手にも伝わります。判断に迷う表現は、求人を出す前にハローワークに相談するのが確実です。
もう一つ大事なのが、求人の文面だけの問題ではないということです。求人を年齢不問にしていても、年齢を理由に応募を断ったり、面接で年齢を理由に採否を決めたりすれば法違反になります。応募者の年齢を理由に雇用形態や職種などの条件を変えることもできません(出典: 厚生労働省リーフレット「その募集・採用 年齢にこだわっていませんか?」2025年4月版)。
店舗の求人なら「年齢不問+60歳以上歓迎」が使いやすい
60歳以上に限った求人も出せますが、その求人には60歳未満の人は応募できなくなります。店舗のアルバイトのように、一緒に働く人を幅広く探したい募集なら、年齢不問のまま「60歳以上の方歓迎」を添える形のほうが、ほかの応募を締め出さずに、シニア層にも「自分も対象なんだ」と伝えられます。
私は、求人の入口はなるべく狭めず、むしろ増やしたほうがよいと考えています。同じ店でも、仕事の中身や時間帯で求人を分けて出せば、それぞれの条件で仕事を探している人の画面に出るようになります。年齢の言葉で相手を選ぶより、働き方の条件で入口を増やすほうが、結果として出会える人は増えます。なお、求人媒体ごとに独自の掲載ルールもあるので、年齢に触れる表現は媒体のルールもあわせて確認してください。
年齢の言葉より効くのは、仕事の中身の具体さ
年齢を問わず、初めての職場に応募する人が気にしやすいのは、次のようなことです。
- 自分の体力で続けられる仕事か
- 自分の生活のリズムに合う時間に働けるか
- 店の機械や端末の操作を覚えられるか
この3つに具体的に答えていれば、年齢を書かなくても「これなら自分にもできそうだ」と伝わります。
- 1日の作業の中身(担当する範囲、立ち仕事の長さ、重いものを運ぶ場面があるか、どのくらいの頻度か)
- 実際の勤務時間帯(「9:00〜13:00」のように、幅ではなく実際の枠で)
- 週何日から入れるか
- 使う機器と、覚えるまでの段取り(最初の数日で何を覚えるか)
- 一人で任されるまで先輩がつくこと
厚生労働省のリーフレットも、年齢で区切る代わりに、業務内容と必要な能力などを求人に明示するよう勧めていて、運ぶ荷物の重さまで具体的に書いた求人例を載せています。
ここで気をつけたいのが、応募を増やそうとして作業を実際より軽く書くことです。職業安定法は、求人の情報について虚偽の表示や誤解を生じさせる表示を禁じています(出典: 厚生労働省「職業安定法に基づく周知|労働者の募集広告の表示について」2026年10月確認)。重いものを運ぶ日があるなら、その頻度も含めてそのまま書いてください。仕事内容の欄の組み立て方は求人の仕事内容の書き方と例文で詳しく解説しています。
求人枠は「時間帯」で切り出す
全部の時間帯をまとめた1本の求人では、短い時間だけ働きたい人の探し方と噛み合いません。時間帯や働き方で枠を分けると、届く相手が変わります。
| 枠 | 前に出す情報 |
|---|---|
| 早朝(開店前の清掃・仕込み・品出しなど) | 短時間で終わること、日中の時間が残ること |
| 日中(客足が落ち着く時間帯) | その時間帯の作業内容、休憩の取り方 |
| 週2〜3日の短時間 | 無理なく続けられる勤務量、家からの近さ |
枠を分けるときは、本文も書き分けてください。文面を複製しただけの求人は、媒体側で重複とみなされて掲載が止まることがあります。
写真は、実際に一緒に働くメンバーをそのまま
求人の写真は、来てほしい人を選ぶための道具ではありません。写すのは、実際に一緒に働くメンバーをそのままにしてください。厚生労働省のQ&Aは、スタッフの写真やキャッチコピーで会社の現状を表すこと自体は直接には年齢制限に当たらないとしつつ、「その年代でなければならない」と求職者に誤解させないよう努める必要があるとしています(出典: 厚生労働省「労働者の募集及び採用における年齢制限禁止の義務化に係るQ&A」2025年4月1日現在)。
年代を演出する写真を探すより、その時間帯の仕事の様子や、先輩が教えている場面を見せるほうが、読む人は「自分がここで働く姿」を想像しやすくなります。スタッフの写真はスマホで撮った普段どおりのもので十分です。撮り方は求人写真の撮り方にまとめています。
応募の入口を、Webのフォームだけにしない
求人媒体の応募フォームは、スマホで入力することを前提に作られています。入力する項目が多いと、そこで手が止まる人もいます。応募の入口は、いくつか用意しておくと安心です。
- 媒体で設定できる範囲で、応募時の入力項目を減らす
- 電話での応募窓口を書く(受付時間も)
- 店舗で直接応募を受け付けるなら、そのことを書く
- 履歴書なしで、まず職場を見に来られるようにする
応募後の連絡も、媒体のメッセージ、メール、SMS、電話を組み合わせてください。どの方法でつながったかを記録しておくと、自分の店で効く連絡の順番が見えてきます。
面接と受け入れで気をつけること
面接では、業務を安全に続けられるかを確かめることは必要です。ただし、家族のことや生活環境のことなど、仕事に関係のない事柄には踏み込まないでください。厚生労働省は、家族や生活環境に関することを応募書類や面接で把握しないよう求めています(出典: 厚生労働省「公正な採用選考の基本」2026年10月確認)。体力のことが心配なら、仕事の中身を具体的に説明し、できれば面接の前後に職場を見てもらって、本人に判断してもらうのがいちばん確実です。
私たちも自社で店舗を運営していて、求人の見せ方や条件によって応募してくる人がどう変わるかを確かめながら採用しています。面接では、手を使う仕事であることや、慣れるまでの大変さを最初に伝えるようにしています。良いところだけを聞いて入った人より、大変さも分かったうえで入った人のほうが、入ってからの「思っていたのと違う」が小さく済みます。
受け入れでは、誰が・いつ・何を教えるかを先に決めておいてください。これは年代を問わない基本ですが、久しぶりに働き始める人にはとくに効きます。最初の数週間の組み立て方は新人がすぐ辞める店舗の共通点と、3ヶ月のオンボーディング設計で詳しく書いています。
採用後の手続きでは、雇用保険や社会保険、年金を受け取りながら働く場合の扱いなど、年齢や働き方で変わることがあります。たとえば日本年金機構は、老齢厚生年金を受け取っている人が厚生年金保険に加入して働くと、給与や賞与の額に応じて年金の一部または全部が止まることがあると案内しています(出典: 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内」2026年10月1日更新)。求人票で断定的な説明は書かず、本人が気にしている場合は、年金事務所やハローワーク、社会保険労務士への確認を勧めてください。
まとめ
- 募集・採用の年齢制限は原則禁止。ただし60歳以上に限った募集や「60歳以上の方歓迎」の併記は例外として認められる
- 60歳以上でも上限は付けられない。「50代歓迎」「40歳以上歓迎」のように60歳未満を含む年代を優遇する書き方も避ける
- 「シニア歓迎」のようなあいまいな言葉より、年齢を明確に書くか、働き方の条件で書く
- 作業の中身・時間帯・覚え方を具体的に書き、写真は実際のメンバーをそのまま写す
- 年齢不問の求人では、応募者を年齢で選ばない。面接では仕事を見せて本人に判断してもらう
まずは今の求人から、年齢に触れている言葉をすべて書き出し、この記事の表に照らして直してみてください。法令の面で安心できるだけでなく、読む人に仕事の中身がよく伝わる求人になります。
よくある質問
求人に「60歳以上歓迎」と書いてもよいですか?
書けます。厚生労働省のQ&Aでは、年齢不問としたうえで「60歳以上の方歓迎」と併記することは、60歳以上の高年齢者に限って募集・採用する場合の例外に合致するため違法とはならないとされています。ただし「60歳以上70歳以下」のように上限を付けることは認められていません。
「50代歓迎」や「40歳以上歓迎」はどうですか?
60歳未満の特定の年代を、ほかの年齢層より優遇する書き方です。厚生労働省のQ&Aでは、こうした歓迎の表示はほかの年齢層の応募を妨げるおそれがあり、原則として適当でないとされています。年代ではなく、仕事の内容や時間帯で書いてください。
「シニア歓迎」と書くのは問題ありますか?
厚生労働省のQ&Aに「シニア」という言葉そのものについての記載は見当たりませんでした。何歳からをシニアと呼ぶかは人によって違うため、60歳以上の方を歓迎したいなら「60歳以上の方歓迎」と年齢をはっきり書くか、働き方の条件で書くほうが確実です。迷う場合は、求人を出す前にハローワークに相談してください。
年齢不問の求人に応募してきた人を、年齢を理由に断ってもよいですか?
できません。求人を年齢不問にしていても、年齢を理由に応募を断ったり、書類選考や面接で年齢を理由に採否を決めたりすることは法違反になると、厚生労働省は案内しています。応募者の年齢を理由に、雇用形態などの条件を変えることもできません。
60歳以上の人を雇うとき、年金や保険で気をつけることはありますか?
雇用保険や社会保険の手続き、年金を受け取りながら働く場合の扱いは、年齢や働き方によって変わります。求人票で断定せず、本人が気にしている場合は、年金事務所やハローワーク、社会保険労務士に確認するよう案内してください。