店長の労働時間と休み|管理監督者の扱いと、店長が倒れない店づくり
この記事の結論
店長という肩書きだけでは、労働基準法の「管理監督者」にはなりません。採用やシフトを決める権限、労働時間の裁量、待遇の実態で判断され、当たらなければ残業代や休日の決まりがそのまま適用されます。管理監督者でも深夜の割増賃金・年次有給休暇・労働時間の把握はなくならないため(2026年10月時点)、店長が欠員の穴埋めで倒れないよう、人とシフトの余力を先につくります。
店長には役職の手当を出しているから、残業代はいらない。店長なのだから、人が足りない日は店長が埋めるのが当たり前。小さな店ほど、こうした考え方になりやすいものです。そして気づくと、店長だけが休めず、店長が辞めると店が止まる、という状態になっています。
結論から言うと、店長という肩書きだけでは、労働基準法の「管理監督者」にはなりません。権限、働き方、待遇の実態で判断され、当たらなければ残業代や休日の決まりがそのまま適用されます。管理監督者に当たる場合でも、深夜の割増賃金と年次有給休暇はなくならず、労働時間の把握も必要です。
この記事では、厚生労働省の通達と資料をもとに、店舗の店長が管理監督者に当たるかを見るポイントを整理したうえで、私たちが自分たちの店で考えている「店長が倒れない店づくり」をまとめます。法律の内容は2026年10月時点のものです。自分の店の扱いを決めるときは、社会保険労務士などの専門家に確認してください。
「店長=管理監督者」ではない
労働基準法第41条第2号の「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)には、労働時間、休憩、休日に関する規定が適用されません。ただし、その範囲はとても狭く決められています。
厚生労働省の解釈では、管理監督者とは、労働条件の決定その他の労務管理について経営者と一体的な立場にある人のことで、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものとされています(出典: 厚生労働省「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」参考2、昭和22年発基第17号・昭和63年基発第150号、2026年10月確認)。会社が「店長」と呼んでいるかどうかでは決まりません。
厚生労働省は、いわゆる「名ばかり管理職」として、チェーン展開する店舗の店長などが、十分な権限や相応の待遇がないのに管理監督者として扱われ、長時間の労働が行われるなどの不適切な事案がみられることから、2008年に判断の要素を整理した通達を出しています(出典: 厚生労働省「「管理監督者」の範囲の適正化に関するQ&A」問1、2026年10月確認)。このとき、管理監督者の範囲に問題があると考えられる店舗を対象に全国の労働基準監督署が監督指導を行ったところ、管理監督者として扱われていた店長55人のうち45人は、管理監督者と認められませんでした(出典: 同 報道発表 参考3、2008年9月9日)。
店舗の店長で見られる3つのポイント
通達では、店舗の店長などの管理監督者性について、否定する要素が次のように整理されています(出典: 厚生労働省 基発第0909001号、2008年9月9日・2026年10月確認)。
| 見られる点 | 管理監督者性を否定する重要な要素 | 管理監督者性を否定する補強要素 |
|---|---|---|
| 職務内容、責任と権限 | アルバイト・パートの採用(人選のみを含む)の責任と権限が実質的にない。解雇に実質的に関与しない。部下の人事考課に実質的に関与しない。勤務割表の作成や所定時間外労働の命令の責任と権限が実質的にない | ― |
| 勤務態様 | 遅刻や早退で、減給や人事考課での負の評価など不利益な扱いを受ける | 人が足りないときに自らその業務に入らなければならないなどで長時間労働を余儀なくされ、労働時間の裁量がほとんどない。マニュアルに従った部下と同じ働き方が労働時間の大半を占める |
| 賃金等の待遇 | 時間単価に直すと、店舗のアルバイト・パートの賃金に満たない。とくに最低賃金に満たない場合は極めて重要な否定要素 | 基本給や役職手当が、割増賃金が払われないことを考えると十分でない。1年間の賃金の総額が一般の社員と同じ程度以下 |
厚生労働省のQ&Aでは、これらの否定要素に一つでも当てはまれば管理監督者に該当しない可能性が大きく、当てはまらない場合でも、それだけで管理監督者と認められるわけではないとされています(出典: 厚生労働省「「管理監督者」の範囲の適正化に関するQ&A」問3、2026年10月確認)。
小さな店の店長を思い浮かべると、どれも身近な話です。シフトは店長が組んでいても、採用は本部やオーナーが決めている。人が足りない日は店長が入り、結果としていちばん長く働いている。手当はあるが、時間で割るとアルバイトとあまり変わらない。こうした実態があるなら、店長を管理監督者として扱うのは難しいと考えて、残業代や休日を前提に人件費を組み直すほうが安全です。人件費の枠の考え方は店舗の人件費の考え方で解説しています。
管理監督者でも、なくならないもの
管理監督者に当たる場合でも、適用除外になるのは労働時間、休憩、休日の規定だけです。次のことは、管理監督者にもそのまま求められます。
- 深夜の割増賃金: 深夜労働に対する割増賃金と、年次有給休暇に関する規定は、管理監督者でも適用除外になりません(出典: 長野労働局「労働条件ハンドブック」9 労働時間、休憩、休日の適用除外、2026年10月確認)
- 年次有給休暇と、年5日の取得: 年次有給休暇は管理監督者を含む労働者に付与され、2019年4月からは、年10日以上の年次有給休暇が付与される人に、そのうち年5日を使用者が時季を指定して取得させることが必要になっています(出典: 奈良労働局 報道発表、2019年9月13日)
- 労働時間の状況の把握: 事業者は、医師の面接指導を行うために、タイムカードやパソコンの使用時間の記録などの客観的な方法で、管理監督者を含む労働者の労働時間の状況を把握し、その記録を3年間保存する必要があります。時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積があって本人が申し出た場合には、医師の面接指導を行うことが義務です(出典: 厚生労働省 労働基準局「管理監督者の労働時間データについて」、労働安全衛生法第66条の8の3、2026年10月確認)
同じ資料の集計では、1か月の時間外・休日労働が80時間を超えた月があったと答えた人の割合は、管理的職業従事者(会社役員や課長相当以上の管理職)が4.1%(出典: 同資料、令和4年労働安全衛生調査を基に作成)で、全職種の平均の2.0%(出典: 同上)を上回っていました。役職がつくほど、時間が見えにくくなります。だからこそ、記録が要ります。
店長が倒れる店で起きていること
法律の話とは別に、店長が疲れきって辞めていく店には、共通するパターンがあります。
- 急な欠員が出ると、まず店長が埋める
- 採用の連絡、面接、新人の教育が、全部店長に集まっている
- 休みの日にも、予約やシフトの連絡が店長に届く
- 売上の数字の責任が、店長1人に乗っている
代表・中野谷のひとこと
予約とかのところで、どうしても休みの日に連絡が来ちゃったりとか、やっぱり出ちゃったりとか。売上も僕が追っているので、今こうだけど、っていう話がやっぱり出るじゃないですか。そういうのが嫌だなと思う人は、一定数いるかなっていう感覚です。
店長を頼りにしていることと、店長に寄りかかりきることは別物です。私たちは、店長の役割に「責任」という言葉を重ねすぎないようにしていて、店を回す仕組みのほうで店長の負担を減らすことを考えています。たとえば私たちの店舗では、一次面接をAI面接に任せ、そのあとの面接は代表と店の責任者がオンラインで短く行う形にして、店の責任者が面接にかける時間を減らしました。
店長が倒れない店づくり5つ
1. 店長の休みを、先にシフトに入れる シフトを組むときに、店長の休みを最初に確定させます。予約制の店なら、その日の予約の枠は店長がいない前提で開けます。店長が休む日に誰が責任者になるかも、シフト表に書いておきます。
2. 欠員の穴を、店長以外でも埋められるようにする 短い時間なら入れるスタッフ、近くの店からの応援、急な欠員のときだけ連絡するスタッフの一覧など、店長以外の選択肢を用意します。短い時間の働き方の組み方は時短勤務・短時間シフトでスタッフ不足を乗り切るで書いています。
3. 休みの日の連絡にルールを決める 本当に急ぎの連絡だけを流す先を決め、それ以外は次の勤務日まで待ちます。代わりに判断する人を決めておくと、店長に連絡しなくても店が回ります。店長が長く抜けたときの備え方は店長が休職・退職したときの引き継ぎでまとめています。
4. 採用と面接の初動を、店長の仕事から外す 応募への最初の連絡や面接の日程調整は、オーナーや本部、外部の仕組みに任せられる仕事です。店長には、最後に一緒に働く人を決める場面に時間を使ってもらいます。
5. 労働時間を記録して、毎月見る 店長の出勤と退勤の時刻を、タイムカードなどで記録します。毎月、店長の労働時間と休日の数をオーナーが見て、長くなっている月は理由と次の月の手当てを話し合います。
休める店は、採用でも強くなります。
代表・中野谷のひとこと
週休2日でやっていました、でも休みがうまく取れないとか、残業がめっちゃ多かったとかで、美容に来ます、ヘッドスパに来ます、っていうケースが多いです。
店長が休めていることは、これから応募してくる人にとっても、この店で長く働けるかを判断する材料になります。
判断に迷ったら
店長を管理監督者として扱うかどうかは、就業規則や賃金規程、実際の権限と働き方をそろえて判断する必要があります。迷ったら、社会保険労務士などの専門家や、最寄りの労働基準監督署の相談窓口に確認してください。複数の店舗をまとめる役を置くときの考え方はエリアマネージャーの役割でも触れています。
まとめ
- 店長という肩書きだけでは管理監督者にならない。採用・シフトの権限、労働時間の裁量、待遇の実態で判断される
- 管理監督者でも、深夜の割増賃金、年次有給休暇と年5日の取得、労働時間の状況の把握はなくならない
- 店長の休みを先に決め、欠員の穴と採用の初動を店長以外でも回せるようにし、労働時間を毎月見る
次の一歩として、先月の店長の出勤と退勤の時刻、休んだ日の数を書き出してみてください。数字にすると、店長に何が寄っているかが見えてきます。
よくある質問
店長は、労働基準法の管理監督者に当たりますか?
肩書きでは決まりません。経営者と一体的な立場にあるかを、職務内容、責任と権限、勤務の実態、賃金などの待遇から総合的に判断します。厚生労働省の通達では、アルバイトの採用や勤務割表の作成の権限が実質的にない、時間単価に直すとアルバイトの賃金に満たない、といった場合は管理監督者性を否定する重要な要素とされています。
名ばかり管理職とは、どういうことですか?
十分な権限や相応の待遇がないのに、管理監督者として扱われ、長時間の労働や割増賃金の不払いが起きている状態のことです。厚生労働省は、チェーン展開する店舗の店長などでこうした事案がみられるとして、判断の要素を整理した通達を出しています。
管理監督者なら、深夜の手当や有給休暇はいりませんか?
いいえ。管理監督者でも、深夜の労働に対する割増賃金と年次有給休暇の規定は適用されます。年次有給休暇を年に10日以上与える人には、年5日を取らせることも必要です。
店長の労働時間は、記録しなくてもよいですか?
記録が必要です。労働安全衛生法により、管理監督者を含めて、タイムカードやパソコンの使用時間の記録などの客観的な方法で労働時間の状況を把握し、記録を3年間保存する必要があります。長時間の労働が続いた人には、医師の面接指導の仕組みもあります。