店長の育て方|任せる仕事の順番と、店長が辞めない仕組み
この記事の結論
店長は、研修を受けさせるより、仕事を順番に任せて自分で決める経験を積んでもらうことで育ちます。店の1日の回し方から始めて、シフトと発注、数字、人、判断へと任せる範囲を広げ、答えを先に言わずに案を出してもらい、週1回の短い時間で一緒に振り返ります。辞めない仕組みは、1人で抱えさせないことと、店長の先の道を見せることです。
仕事のできるスタッフを店長にしたのに、店長になった途端にうまくいかなくなった。店長を育てたいけれど、何から任せればいいのか分からない。2店舗目を考え始めた経営者ほど、ここで足が止まります。
私たちは店舗の採用を支援する会社ですが、自分たちでもリラクゼーションサロンとホワイトニングサロンを運営しています。代表の中野谷は採用の仕事を長く続けてきましたが、自分で店を運営してみて、人を採ることと、店を任せられる人を育てることは別の難しさだと感じてきました。この記事では、私たちが店の責任者と毎週話しながら試してきた店長の育て方を、任せる順番と関わり方に分けてまとめます。
店長が育たない店で起きていること
店長が育たない理由は、本人の素質より、任せ方の側にあることが多いと私たちは見ています。よくあるのは次の4つです。
- 現場でいちばんできる人を店長にして、仕事の中身はそのまま。施術や接客に加えて店長の仕事が上乗せされ、ただ忙しくなる
- 「任せた」が「放っておいた」になっている。何を自分で決めてよくて、何は相談が要るのかが伝わっていない
- 逆に、細かいところまでオーナーが口を出し、結局はオーナーが決めている。店長は言われたことをこなす人のまま
- 店長が困ったときに相談できる相手と時間が決まっていない
どれも、任せる順番と、任せたあとの関わり方を決めておけば防げます。
最初に、本人に「店長をやりたいか」を確かめる
店長は、頑張った人へのご褒美ではありません。仕事の種類が変わります。自分の手を動かして成果を出す仕事から、人と店を動かして成果を出す仕事になるからです。
だから最初に、本人が店長をやりたいのか、どこまでやりたいのかを話します。私たちも、本人の考えがまだはっきりしないうちに、店長としての時間の使い方を求める話をするのは早い、と立ち止まったことがあります。店長をやりたいなら、時間の使い方も含めて任せる。やりたくないなら、技術のリーダーや新人の教育係など、店長にならなくても力を出せる道を用意する。どちらかを先に決めておかないと、指導のつもりの言葉がすれ違います。
任せる範囲は、あとから狭めてもいいと伝えておくことも大切です。「この仕事はやりたくない」と言える余地があると、店長は無理をため込まずに済みます。
任せる仕事の順番
任せる仕事は、やり方が決まっている仕事から、答えのない仕事へと順番に広げます。私たちが目安にしている段階は次のとおりです。
| 段階 | 任せること | ねらい |
|---|---|---|
| 1. 店の1日を回す | 開店・閉店、日報、レジ締め、その日の予約の確認 | 自分の持ち場だけでなく店全体を見る |
| 2. 人と物の段取り | シフトの作成、発注と在庫、備品 | 先の予定から逆算して準備する |
| 3. 数字 | 毎日の売上と予約の確認、月1回のミーティングの進行 | 店の数字を自分の言葉で説明する |
| 4. 人 | 新人の研修の計画、スタッフとの面談、面接への同席 | 人を育てる側に回る |
| 5. 判断 | 集客の打ち手、採用が必要かどうか、予算の提案 | 店の方向を自分で決める |
段階1から3は、手順を教えれば覚えられる仕事です。段階4と5は、手順だけでは足りず、経験を積みながら身につける仕事です。ここを急いで任せると、店長は正解が分からないまま責任だけを背負うことになります。
段階3の数字は、毎朝見る数字を決めておくと任せやすくなります。見る順番は店舗の数字を毎日見る習慣にまとめています。段階4の採用も、店長に丸ごと預けないほうがうまくいきます。店長は店舗運営のプロでも、採用の専門家とは限らないからです。私たちの店舗では、面接に代表と店舗の責任者が一緒に入り、店長だけで採用を決めない形にしています。店長が採用で押さえておきたい動きは採用がうまい店長がやっていることで解説しています。
任せたら、答えを先に言わない
任せた仕事で店長が迷っているとき、オーナーが答えを言えば話は早く済みます。ただ、それを続けると、店長はいつまでも答えを待つ人のままです。
代表・中野谷のひとこと
僕が答えてもいいんですけど、それはそれで僕の答えになっちゃうので、つまらないんです。自分で考えて、こうやったら新規のお客さんが集まりそうだから、それをやります、と決めたほうがいいと思っています。
私たちは、店長に考えてほしいことがあるときは、期限を決めて案を出してもらうようにしています。次のミーティングまでに、空いている時間に何をするかを決めてきてほしい、という具合です。出てきた案が自分の考えと違っても、お客さまや店に大きな損が出ない範囲なら、一度その案でやってもらいます。
代表・中野谷のひとこと
やってみて、うまくいかなかったな、うまくいったな、というのを体験してほしいから、俺は口出しはしないです。
口を出さない代わりに、迷ったときに戻る基準だけは言葉でそろえておきます。お客さまの満足を優先するのか、その日の売上を優先するのか。基準が共有されていれば、店長が一人で決めた判断も大きくはずれません。
振り返りは、週1回の短い時間で
任せっぱなしにしないために、私たちは店の責任者と週1回、短い確認の時間を持っています。聞くのは、今週困ったこと、悩んでいること、売上の進み具合です。任せた仕事の結果も、この場で聞きます。
うまくいかなかったときは、誰のせいかではなく、どこで詰まったかを一緒に見ます。シフトの組み方の問題なのか、予約が足りないのか、そもそも任せた範囲が広すぎたのか。詰まった場所が分かれば、次に任せる範囲も調整できます。話の聞き方や型は店舗の1on1の進め方で詳しく書いています。
店長が辞めない仕組み
店長が育ってきたころに怖いのが、店長が辞めてしまうことです。私たちが気をつけているのは次の3つです。
1つ目は、1人で抱えさせないことです。店長の仕事を書き出して、それぞれ代わりにできる人を決めておきます。シフトの作成、発注、SNSの投稿などは、ほかのスタッフに分けられます。人に関わる仕事も同じで、店長が伝えたいことを、ほかのスタッフから伝えてもらう形でもかまいません。店長が急に抜けたときに店を止めない準備は店長が休職・退職したときの引き継ぎにまとめています。
2つ目は、働く時間を一緒に見ることです。任せる仕事を増やすなら、減らす仕事も決めます。代表の中野谷は、店長の残業が減ると、ほかのスタッフの残業も減ると話しています。店長がいつまでも店に残っていると、ほかの人も帰りにくくなります。
3つ目は、店長を続けた先の役割を見せることです。店長として力がついた人ほど、次はもっと人を育てたい、店を増やしたい、と考えます。その気持ちに応えられないと、別の店でその役割を探しに行ってしまいます。2店舗目の責任者、新人の教育、採用の仕事など、次の役割の候補を、店長と1on1で話しておきます。私たちの会社でも、本人の希望に応じて、店舗から採用支援の仕事へ移る道をつくっています。
まとめ
- 店長が育つかどうかは、素質より任せ方で決まる。まず本人に店長をやりたいかを確かめ、任せる範囲はあとから狭めてもいいと伝える
- 任せる仕事は、店の1日を回す仕事→シフトと発注→数字→人→判断の順に広げる。答えのない仕事ほど急がない
- 迷っているときは答えを先に言わず、期限を決めて案を出してもらう。判断の基準だけは言葉でそろえ、週1回の短い時間で振り返る
- 1人で抱えさせない、働く時間を見る、先の役割を見せる。この3つが店長の定着につながる
まずは、いまの店長に任せている仕事を書き出して、上の5つの段階のどこまで進んでいるかを確かめてください。次に任せる仕事が1つ決まれば、店長の育て方は動き始めます。
よくある質問
店長には何から任せればよいですか?
開店・閉店、日報、レジ締めといった、店の1日を回す仕事からです。次にシフトや発注、その次に売上や予約の確認、新人の研修やスタッフとの面談、最後に集客や採用の判断と、やり方が決まっている仕事から答えのない仕事へ順に広げていきます。
店長に向いている人は、どう見極めればよいですか?
いちばん売上を上げているスタッフが、店長に向いているとは限りません。まず本人に店長をやりたいかを聞き、店全体を見る仕事を少しずつ任せてみて、周りに声をかけられるか、困ったことを早めに相談できるかを見ます。
店長に任せたのに、うまくいかないときはどうすればよいですか?
任せた範囲と、迷ったときの判断の基準が伝わっているかを確かめます。答えを先に言わずに案を出してもらい、危なくない範囲なら一度やってもらって、週1回の振り返りで何が詰まったかを一緒に見ます。
店長が辞めないために、経営者ができることは何ですか?
店長の仕事を書き出して代わりにできる人を決め、1人で抱えさせないこと。任せる仕事を増やすなら減らす仕事も決めること。そして2店舗目や教育係、採用の仕事など、店長を続けた先の役割を見せることです。