Column コラム

店舗経営とAI

社内でAIを使い始める研修の進め方|パソコンに慣れていないスタッフにも

この記事の結論

社内でAIを使い始める研修は、AIの機能を教える場ではなく、スタッフが自分の仕事を1つ選んでAIに頼み、出てきた結果を自分で確かめるところまでを一緒にやる場にします。パソコンに慣れていない人が多い中小企業や店舗なら、アカウントづくりは研修前の宿題にして画面のボタンの名前で手順を書き、当日は最初に「入れてはいけない情報」と「外に出す前に人が読む」というルールを共有します。

「スタッフにもAIを使ってほしい」と思っていても、何をどう教えればいいか分からない。パソコンに慣れていないスタッフもいる。中小企業や店舗の経営者から、よく聞く悩みです。

私たちは、社内のスタッフにも、お客さまの会社の方にも、AIの始め方を伝えてきました。その中で分かったのは、研修でAIの機能をたくさん教えても、使い続けてもらえるとは限らない、ということです。この記事では、パソコンに慣れていない人がいる職場で、社内でAIを使い始める研修をどう進めるかをまとめます。会社としてAIの活用を始める最初の1か月の進め方は、中小企業・店舗のAI活用は何から始める?に書いています。

研修のゴールは「自分の仕事を1つ、AIに頼めた」

研修のゴールは、AIに詳しくなることではありません。受けた人が、自分の仕事を1つ選んでAIに頼み、出てきた結果を自分で確かめるところまでできれば十分です。

代表自身、AIの使い方をいろいろな人から教わってきました。その中で役に立ったのは、機能の説明よりも、実際の仕事での使い方でした。

代表・中野谷のひとこと

使いやすいのは、実務で使っていますという人に、じゃあ教えてくださいって教えてもらったのが一番よかったです。AIの方たちって、スキルだけ教えてくれるので、よくわからないんです。じゃあこれ何を作ったらいいんだろう、とか。

道具の操作は、あとからいくらでも覚えられます。研修でつくりたいのは、「この作業ならAIに頼めそうだ」と、受ける人が自分の仕事の中で気づくきっかけです。教える人も、AIに詳しい人より、自分の仕事で実際に使っている人のほうが向いています。

研修の前にやること: 宿題は「アカウントづくり」まで

パソコンに慣れていない人がいる職場では、研修の当日にアカウントづくりから始めると、それだけで時間が終わってしまいます。準備は、研修の前の宿題にします。

私たちは、AIを使い始める人に向けて、始め方の手順書を作って渡しています。「どうやって始めるんですか」と何度も聞かれたので、毎回説明する代わりに、手順書そのものをAIに作ってもらいました。手順書で気をつけたのは、次の点です。

  • 画面に出てくる言葉で書く — 「設定を開く」のような説明ではなく、画面に表示されるボタンの名前と、押す順番で書く
  • 1ページにおさめ、終わった手順に印をつけるチェック欄を置く
  • つまずきやすいところに、つまずいたときの対処を書く — ボタンが見つからない、ログインできない、など
  • 手順書の画面写真に、アカウントの名前や作業の履歴を写さない — 手順書の画像からも、情報は漏れます

あわせて、研修で使う道具は会社で1つに決めておきます。人によって違うAIを使っていると、教える側も教わる側も迷います。料金のかかる道具を使うなら、誰の名義で、どのプランを契約するかも先に決めます。スタッフそれぞれの個人のアカウントで始めてもらうと、あとから会社のルールに合わせにくくなります。

当日の進め方の例

当日は、説明を短くして、受ける人が手を動かす時間を長く取ります。進め方の例です。

順番 やること
1 はじめに 研修のゴールと、入れてはいけない情報、外に出す前に人が読むというルールを共有する
2 実演 教える人が、自分の仕事を1つAIに頼むところを画面で見せる。うまくいかなかった例も見せる
3 やってみる 受ける人が、自分の仕事を1つ選んでAIに頼み、結果を確かめる。教える人は席を回る
4 ふりかえり 試したことを一人ずつ話す。うまくいかなかったことも話す

2の実演では、うまくいく場面だけでなく、AIが間違えた場面も見せます。総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」は、AIの評価や判断、推奨などのアウトプットを人が鵜呑みにしないための対策として、AIの欠点を含む特性を理解できるトレーニングを受けることを挙げています(出典: 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」第2部 共通の指針 令和8年3月31日・2026年10月確認)。AIはもっともらしく間違えることがある、と最初に体験しておくと、そのあと確認を省かなくなります。

3で選ぶ仕事は、受ける人が結果の良し悪しを自分で判断できるものにします。たとえば、店内の案内の文面、スタッフへのお知らせの言い回し、お客さまからよく聞かれる質問への答えの下書きなどです。

研修の最初に共有する3つのルール

操作を教える前に、次の3つを全員で確かめます。

  1. お客さまや応募者、スタッフの個人情報を入れない
  2. IDやパスワードなど、ログインに使う情報を入れない
  3. AIが作ったものは、お客さまや応募者に出す前に人が読む

1つ目について、個人情報保護委員会は、生成AIサービスでは入力された個人情報が機械学習に使われることがあり、ほかの情報と統計的に結びついたうえで、正確な内容でも不正確な内容でも出力されるリスクがある、と注意を呼びかけています(出典: 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」令和5年6月2日)。どの情報なら入れてよいかは、会社として使うサービスの規約と設定を確かめたうえで、研修の前に決めておきます。決め方は生成AIを社内で使うときの情報の扱いにまとめています。

3つ目は、私たちがAIを使うときにいちばん大事にしている線です。AIに任せるのは、下書きや準備まで。送る、投稿する、掲載するといった外に出る操作は、人が決めます。

研修のあとに続けるために

研修を一度やって終わりにすると、使う人と使わない人に分かれていきます。続けるために、次の2つを用意します。

  • 困ったら、まずAIに聞く — 操作で分からないことは、人に聞く前にAIに聞いてもらいます。AIの使い方は、AIに聞くのがいちばん早いことも多いものです
  • 月に一度、試したことを持ち寄る — うまくいったこと、うまくいかなかったことを一人ずつ話します。誰かがうまくいった頼み方は、そのまま全員の型になります

代表・中野谷のひとこと

困ったことがあったら、AIに聞いちゃえばいいじゃないですか。人に聞くより、AIのほうが楽じゃないですか。

もう1つ、研修のあとに目を配りたいのが、AIには向き不向きがあることです。代表は、AIで何かを作れたときに「楽しい、次はあれを作ろう」と思える人と、そうでない人とでは熱量が違う、と話しています。全員に同じ量を求めるより、使い始めた人の工夫を、ほかの人にも見えるようにするほうが広がります。

慣れてきた人には、AIに作業そのものを任せる道具に進んでもらうのも一つの手です。どんな道具で、何に気をつけるかはClaude Code・Codexとは?にまとめています。経営者自身の使い方としては、AIで経営の壁打ちをするも参考にしてください。

まとめ

  • 研修のゴールは、受ける人が自分の仕事を1つAIに頼み、結果を自分で確かめられること。機能の説明は最小限にし、教える人は実務で使っている人にする
  • パソコンに慣れていない人がいるなら、アカウントづくりは研修前の宿題に。手順書は画面のボタンの名前で書き、つまずいたときの対処を添える
  • 最初に、個人情報とログイン情報を入れない、外に出す前に人が読む、の3つを共有する。研修のあとは、困ったらAIに聞き、月に一度試したことを持ち寄る

次の一歩として、研修を受けてほしいスタッフの顔を思い浮かべ、それぞれが毎週くり返している仕事を1つずつ書き出してみてください。それが、研修の当日にAIへ頼んでもらう題材になります。

よくある質問

社内のAI研修は、何から教えればよいですか?

受ける人の仕事から始めます。AIで何ができるかを一通り説明するより、いま毎週くり返している作業を1つ選んで、その場でAIに頼んでみるほうが、研修のあとも使い続けてもらえます。

パソコンに慣れていないスタッフには、どう教えればよいですか?

専門用語を使わず、画面に出てくるボタンの名前と押す順番で手順を書きます。アカウントの作成やアプリの準備は研修の前に宿題として済ませてもらい、つまずきやすいところには、つまずいたときの対処を書いておきます。

研修で必ず伝えるべきルールは何ですか?

お客さまや応募者、スタッフの個人情報を入れないこと、IDやパスワードを入れないこと、AIが作ったものはお客さまや応募者に出す前に人が読むこと、の3つです。どの情報なら入れてよいかは、会社として使うサービスの規約と設定を確かめてから決めておきます。

研修は一度やれば十分ですか?

一度では定着しにくいものです。研修のあとは、操作で困ったらまずAIに聞いてもらい、月に一度ほど、それぞれが試したことを持ち寄る場をつくると、うまくいった頼み方が全員に広がります。

← コラム一覧へ 店舗採用データ 2026 →