Column コラム

店舗経営とAI

中小企業・店舗のAI活用は何から始める?最初の1ヶ月でやること

この記事の結論

中小企業や店舗のAI活用は、AIで新しいことを始めるより、いまの仕事の中で「毎回同じで、重い」作業を1つ選び、AIに置き換えるところから始めます。最初の1ヶ月は、会社で使うAIを1つ決めて毎日話しかけ、仕事を書き出して1つ選び、人がやり方の型を作ってから渡し、ホームページのような小さな物を1つ作る。この順番で十分です。

「AIを使ったほうがいいのは分かっているんですが、何から始めればいいですか」。店舗のオーナーや中小企業の経営者の方から、最近いちばん多く受ける相談です。

私たちは採用の支援をしながら、自分たちでも店舗を運営しています。求人媒体の数字を集めて表にする作業、会議のまとめ、経理の仕分けの下書き、売上や日程調整の管理まで、自分の会社と店舗の仕事を少しずつAIに置き換えてきました。その経験から言えるのは、始め方を間違えなければ、特別な知識がなくても最初の1ヶ月で手応えは出る、ということです。この記事では、その1ヶ月の進め方を週ごとにまとめます。

AI活用は「新しいこと」ではなく「いまある重い仕事」から始める

最初につまずきやすいのが、AIで何か新しいことをやろうとする始め方です。「AIなら新しいサービスが作れそうだ」「集客の新しい仕組みを考えさせよう」と始めると、何を頼めばいいのかが決まらず、触っているうちに日常の仕事に戻ってしまいます。

代表・中野谷のひとこと

AIを使って新しく何かできるかって言われると、多分僕はできないと思っているんですよ。そんなにいい発想は人間できないだろうなと思っちゃっていて。結局AIで僕がやっているのって、ほかのスタッフがやっているこの業務、AIで大体できるじゃんと思って、それを導入しているんです。

私たちも、AIで置き換えてきたのはすべて、すでに誰かが毎日・毎週やっていた仕事です。やり方が決まっていて、手順を説明できる仕事ほど、AIに渡しやすくなります。新しい挑戦にAIを使うのは、置き換えで時間が空いてからで十分です。

1週目: 会社で使うAIを1つ決めて、毎日話しかける

最初の週にやることは2つだけです。

  1. 会社として使う対話型のAIサービスを1つ決める
  2. 経営者自身か、業務をいちばん知っている人が、毎日なにかしら頼んでみる

サービスは複数比べる必要はありません。1つに決めて、使い方に慣れるほうが先です。大事なのは、従業員が個人で登録した無料のアカウントに、会社の情報を入れさせないことです。個人情報保護委員会は、事業者が生成AIサービスに個人情報を含む指示を入力する場合、利用目的の達成に必要な範囲内であることを十分に確認し、入力したデータが機械学習に使われないことなどを確認するよう注意喚起しています(出典: 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」令和5年6月2日・2026年10月確認)。使うサービスの規約と設定は、この週のうちに一度確かめておきます。

頼む内容は何でも構いません。メールの言い回しを直してもらう、長い資料を要約してもらう、来月のシフトの組み方の相談相手にする。きれいな文章で指示を書く必要もありません。

代表・中野谷のひとこと

僕もそうなんですけど、結構口で言っちゃうんですよ、もう指示も。口頭で言ってもいいので、どんどん指示を投げて、頭を良くしていくのと、あとAIと慣れていくのがほんと大切なんで。

この週の目的は、成果を出すことではなく「AIにどう頼むと、どう返ってくるか」の感覚をつかむことです。

2週目: 仕事を書き出して、置き換える作業を1つ選ぶ

2週目は、会社や店舗でくり返している作業を書き出します。そのうえで、次の3つに当てはまるものを1つだけ選びます。

  • 毎回ほぼ同じ手順で進む
  • 時間がかかる、または後回しになりやすい
  • 間違えても、外に出る前に人が気づいて直せる

店舗の仕事でいうと、選びやすいのは次のような作業です。

作業 AIに手伝わせる部分
求人原稿づくり いまの原稿をもとにした下書き、職種ごとの書き分け
求人媒体の数字の確認 表示・応募などの数字を集めて1枚の表にまとめる
会議・ミーティング 録音した内容の文字起こしと要点のまとめ
お知らせ・ブログ 店の情報をもとにした投稿の下書き
スタッフへの連絡 伝えたいことを、角の立たない言い回しに整える
経理 領収書や明細をもとにした仕分けの下書き

反対に、最初の作業に選ばないほうがいいのは、お客さまや応募者に直接届くもの、お金が動くもの、人の採用や評価に関わるものです。これらはAIを使うとしても、人が最後に確認する形が前提になります。この線の引き方はAIに任せる仕事と人がやる仕事の線引きで詳しく書いています。

3週目: 人がやって型を作り、その型をAIに渡す

選んだ作業は、いきなりAIに丸投げしません。まず人がいつもどおりにやって、そのやり方を言葉にします。

  • 何を見て(材料)
  • どんな順番で
  • どういう形にまとめれば「できた」と言えるか(完成の見本)

この3つが言葉になったら、それをそのままAIへの頼み方にします。求人原稿なら、過去にうまくいった原稿を見本として渡し、「この店のこの職種で、同じ形の下書きを」と頼む。媒体の数字なら、毎回作っている表の形を見せて、「この形で埋めて」と頼む。型があると、AIの出したものがどこでずれているかにも、人がすぐ気づけます。

私たちのAI面接代行も、始まりは人の手での面接代行でした。自分たちで回してみて負担の大きさが分かり、聞くべきことの型が見えてから、AIを使う仕組みに作り替えています。順番を逆にして、型のないままAIに任せると、出てきた答えが良いのか悪いのかを誰も判断できません。

4週目: 小さな物を1つ作ってみる(ホームページが練習台になる)

最後の週は、AIに頼んで、形のある物を1つ作ってみます。おすすめはホームページや、求人用・お知らせ用の1枚のページです。

ホームページは、出来上がりが目で見えるので、「ここをこうしたい」「この文字を変えたい」とやり取りを重ねるうちに、AIへの頼み方が自然に身につきます。私たちも、ホームページやページづくりで覚えた頼み方を土台にして、社内の売上管理や日程調整の仕組みまで自分たちで作るようになりました。作る順番はAIで自社の業務システムを作るにまとめています。

1ヶ月たったら確かめる3つのこと

1ヶ月が終わったら、次の3つを振り返ります。

  1. 置き換えた作業で空いた時間は、何に使われたか
  2. AIの出したものは、どこで間違えたか(どんな直しが多かったか)
  3. この作業はこのまま続けるか、やめるか

「AIでこの作業が何時間から何分に減った」という話をよく見かけますが、代表いわく「あれは結構盛ってたりする」ものです。他社の数字と比べるより、自分の店で空いた時間が、接客や採用の面接、スタッフとの会話など、人にしかできない仕事に回っているかを見てください。回っていなければ、置き換える作業の選び方を見直します。

2つ目の「どこで間違えたか」は、記録しておくと次に効きます。AIの答えと、人が直したあとのものを並べて残しておくと、頼み方のどこを変えればいいかが見えてきます。この残し方はAIに判断を任せるときのルールで書いています。

最初の1ヶ月でやらないこと

最後に、始めたばかりの時期に避けたいことをまとめます。

  • 全社・全店舗で一斉に始める — まずは1人、1つの作業から。広げるのは型が固まってから
  • お客さまや応募者への連絡を自動で送る — 下書きまではAI、送るのは人
  • 個人情報をそのまま入れる — 使うサービスの規約と設定を確かめるまでは、名前や連絡先を含まない作業に絞る
  • AIの答えをそのまま決定にする — AIは候補を出す役、決めるのは人

採用の仕事に絞った置き換え方は採用業務のAI活用マップにまとめています。

まとめ

  • AI活用は、新しいことからではなく、いまある「毎回同じで、重い」作業1つから始める
  • 1週目は使うAIを1つ決めて毎日話しかけ、2週目に置き換える作業を選び、3週目に人が型を作って渡し、4週目に小さな物を1つ作る
  • 1ヶ月後は、空いた時間が人にしかできない仕事に回っているかで判断する

まずは今週、会社として使うAIを1つ決めて、今日の仕事のどれか1つを頼んでみてください。上手な頼み方は、使いながら覚えれば間に合います。

動画で見る

代表の中野谷が発信している YouTube「店舗運営チャンネル【採用と集客】」から、この記事に関係する回です。

勝手に動くパソコン 採用のプロのAI活用術
いくつもの求人サイトの数字を毎日集めて表にまとめる作業を、AIに任せている話を代表がしています。手作業でやっていた集計を置き換えた例です。

よくある質問

中小企業や店舗のAI活用は、何から始めればよいですか?

いまの仕事のうち、毎回同じ手順で、時間を取られている作業を1つ選び、そこをAIに手伝わせるところからです。求人原稿やお知らせの下書き、求人媒体の数字の集計、会議のまとめなどが始めやすい作業です。AIで新しい事業を考えるところから入ると、たいてい続きません。

AIの導入に、専門の担当者やエンジニアは必要ですか?

最初の1ヶ月は要りません。会社として使うAIサービスを1つ決め、経営者か業務をいちばん知っている人が毎日使ってみることが先です。仕組みを作るのは、手作業で型が固まってからで間に合います。

最初の1ヶ月で、AIに任せないほうがよいことは何ですか?

お客さまや応募者に届く連絡の自動送信、お金の支払いや登録、採用や評価の判断です。AIの答えには不正確な内容が混じることがあるので、外に出るものと、人やお金に関わる決定は、人が最後に確認する前提で始めます。

個人情報をAIに入力してもよいですか?

個人情報保護委員会は、生成AIサービスに個人情報を含む指示を入力するときは、利用目的の達成に必要な範囲内かを十分に確認し、入力したデータが機械学習に使われないことなどを確認するよう注意喚起しています。最初の1ヶ月は、お客さまや応募者の情報を入れない作業から始めると安心です。

← コラム一覧へ 店舗採用データ 2026 →