AIで自社の業務システムを作る|プログラミングを知らない経営者が試した順番
この記事の結論
プログラミングを仕事にしてこなかった経営者でも、AIに話しかけながら社内の小さな業務システムを作ることはできます。私たちが試してきた順番は、ホームページづくりでAIへの頼み方を覚える、毎日の小さな面倒を1つ仕組みにする、表計算で管理していたものを画面にする、ほかのサービスとつなぐのは最後、の4段です。作れるかどうかより、作ったあとに直し続けられるか、情報を守れるかを先に考えます。
「AIでシステムが作れるって聞くけれど、本当に自分でもできるのか」。中小企業や店舗の経営者の方と話していると、よく出てくる疑問です。
私たちの会社には、システムを専門に作るエンジニアがいません。それでも、社内の情報をまとめたサイト、売上の管理、日程調整、スタッフどうしで「ありがとう」を送り合う仕組みなど、社内で使う道具をAIに頼みながら自分たちで作ってきました。この記事では、プログラミングを仕事にしてこなかった代表が実際にたどった順番と、作る前に決めておきたい守りの部分をまとめます。
なぜ自分たちで作るのか: 「ちょっとした直し」を自分の手に戻す
自分で作ろうと思ったきっかけは、大きな仕組みが欲しかったからではありません。毎月のように出てくる小さな直しを、そのたびに外に頼むのが重かったからです。
代表・中野谷のひとこと
僕もホームページを、そんなにちゃんと作っていなかったんですよ。今月と来月で、ちょっと微妙に違ったりするんですよ。店舗が変わるとかで、そのたびに業者にお願いするのが、ちょっとよく分からなくて。直せるんだったら自分で直したいし。だったら自分で作れるようになりたいなと思って。そうしたら、Claude Codeとか、そういうAIに「ちょっとこうやって」って言ったら、全部書いてきたりするんで。
既製のサービスで足りる業務なら、無理に作る必要はありません。たとえば応募者の管理なら、既製のサービスを入れるべき状態かどうかの見極め方を応募者管理システム(ATS)は中小企業に必要かで書いています。自分で作る価値があるのは、店のやり方に合う既製品がない、小さな直しを頻繁にしたい、ばらばらの管理を1つにまとめたい、という場合です。
順番1: ホームページで「AIへの頼み方」を覚える
最初の一歩としておすすめしているのは、ホームページや1枚のページをAIで作ってみることです。代表も、AIの使い方を聞かれたときは「まず絶対ホームページを作りましょう、と話す。そうすると受け答えの仕方がよく分かる」と話しています。
ホームページが練習台に向いている理由は3つあります。
- 出来上がりが目で見えるので、頼み方を変えると何が変わるかがすぐ分かる
- 公開する前なら、間違えても困る人がいない
- 「この文字を変えて」「地図を入れて」と細かいやり取りを重ねるうちに、AIに伝わる言い方が身につく
ここで覚えるのは、プログラミングではなく「作りたいものを言葉にして、違うところを指摘する」やり方です。この感覚さえつかめば、次の段に進めます。AI活用全体の始め方は中小企業・店舗のAI活用は何から始める?にまとめています。
順番2: 毎日の小さな面倒を、1つだけ仕組みにする
次に作るのは、毎日・毎週くり返している小さな面倒を片づける仕組みです。大きなシステムではなく、1つの手間を消すだけの道具で十分です。
代表・中野谷のひとこと
店舗の方でいうと、スケジュールを送るのも、AIを使ってGoogleのスクリプトを組んでやったら、めちゃめちゃ楽でした。コードを全部教えてくれて、コピーして貼って、ちょっと違ったら「これちょっと違う」って直してもらう。それで、店舗のスタッフが僕のスケジュールをすぐ把握できるようにもなりました。
(YouTube「【使わないと損】AIで利益最大化! 経営者が「やるべきこと」と「AIに任せること」の線引き」より)
私たちの場合、もう少し大きなものでは、複数の求人媒体の管理画面を見て回り、数字を1枚の表に集める作業を、AIに毎日やってもらっています。以前は人が手で拾っていた集計です。
この段で選ぶ作業の条件は、次の3つです。
- 毎回同じ手順で、人がやると忘れたり遅れたりする
- 仕組みが止まっても、人の手で代わりができる
- お客さまや応募者に直接届く操作を含まない
3つ目が大事です。仕組みが間違えたときに外に出てしまう作業は、最初の題材にしません。
順番3: 表計算で管理していたものを、画面にする
小さな仕組みがいくつか動くようになったら、表計算のシートで管理していたものを、専用の画面に移すことを考えます。私たちも、店舗の売上の管理を表計算から自分たちで作った画面に移し、店舗のスタッフが日報を入れると、その月の目標と並んで見えるようにしました。
画面にすると、次のような良さがあります。
- 入力する場所が1つになり、どのシートが最新か迷わなくなる
- 入力の形をそろえられるので、打ち間違いや書き方のばらつきが減る
- 店舗ごと、役割ごとに見せる範囲を分けられる
ただし、気をつけたいことがあります。代表の言葉を借りると「後ろで動いているものと画面は別」で、見た目の整った画面はAIがいくらでも作ってくれます。本当に大事なのは、画面の裏で数字が正しくつながっているかです。きれいな画面ができたことに満足せず、入れた数字が正しく集計されているかを、しばらくは元の表計算と並べて確かめてください。数字の集め方そのものは採用データの見える化の始め方も参考になります。
順番4: ほかのサービスとつなぐのは、いちばん最後
最後の段が、外のサービスとつなぐことです。予約、会計、求人媒体などの情報を自動で取り込めると便利ですが、ここがいちばん止まりやすい部分でもあります。
私たちも、媒体の管理画面から数字を自動で取ってくる仕組みが、相手の画面の作りが少し変わっただけでうまく取れなくなる、という経験をしてきました。人の代わりに画面を操作させる仕組みは、相手の都合で止まる前提で作ります。
つなぐ前に確かめることは3つです。
- そのサービスの規約で、自動での操作や取り込みが認められているか
- 公式に用意された連携の方法があるなら、そちらを使えないか
- 止まったときに気づける仕組みと、人の手で代わりにやる手順があるか
作る前に決めておく「守り」の部分
自分で作る仕組みは、守りも自分で考える必要があります。最初に次の点を決めておきます。
- 合言葉や鍵を書き込まない — パスワードや、サービスどうしをつなぐための鍵を、作った物の中や共有の場所にそのまま書かない
- 保存場所の公開設定を確かめる — 作った物の置き場所を、誤って誰でも見られる設定にしない
- 誰が何を見られるかを分ける — 店舗ごと、役割ごとに見える範囲を決める。辞めた人のアカウントを止める
- バックアップを取る — IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版は、はじめに取り組んでほしい対策に「バックアップを取ろう!」を加えています(出典: IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版 2026年3月27日公開・2026年10月確認)
- AIが書いたコードも確かめる — 総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」は、プログラムコードを生成するAIを活用する場合は、生成したコードの安全性やセキュリティ面への配慮が重要になる、としています(出典: 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」本編 令和8年3月31日・2026年10月確認)
お客さまや応募者の個人情報を扱う仕組みは、ほかの仕組みで作り方に慣れてから手をつけます。最初の題材にはしないでください。
「作った人しか分からない」を避ける
自分で作った仕組みの弱点は、作った人がいないと直せなくなることです。対策として、作るたびに「何のための仕組みか」「どこを触ると何が変わるか」「止まったら誰が何をするか」の説明もAIに書かせて、決まった場所に残しておきます。説明を書かせる手間は、作る手間に比べればわずかです。
もう1つ、作ることが楽しくなってきたときほど、それで仕事が軽くなったかを見直します。仕組みがいくつか動くと「次は何を作ればいいのか」が分からなくなる、と代表も話しています。迷ったら、また「いま誰がどの作業に時間を取られているか」に戻ります。AIに作らせた仕組みが正しく動いているかの確かめ方はAIに判断を任せるときのルールで書いています。
まとめ
- プログラミングを知らなくても、作りたいものを言葉で伝え、違うところを指摘するやり方で、社内の小さな仕組みは作れる
- 順番は、ホームページで頼み方を覚える、小さな面倒を1つ仕組みにする、表計算の管理を画面にする、外とつなぐのは最後
- 鍵を書き込まない、公開設定、見える範囲、バックアップ、AIが書いたコードの確認を、作る前に決めておく
まずは、自分の店のホームページか、お知らせのページを1枚、AIに頼んで作ってみてください。「ここを変えて」と言える回数が増えるほど、次に作れるものが増えていきます。
動画で見る
代表の中野谷が発信している YouTube「店舗運営チャンネル【採用と集客】」から、この記事に関係する回です。
求人サイトの数字を毎日集めて表にまとめる作業を、AIに動かしてもらっている話を代表がしています。手作業を仕組みに置き換えた例です。
よくある質問
プログラミングを知らなくても、AIで業務システムは作れますか?
社内で使う小さな仕組みなら作れます。作りたいものを言葉で伝え、AIが出したものを動かして、違うところを「ここが違う」と伝えて直してもらう、のくり返しです。最初は、間違えても困る人が少ないホームページや、自分しか使わない小さな仕組みから始めます。
最初に作るなら、何がおすすめですか?
ホームページか、1枚のお知らせページです。出来上がりが目で見えるので、どう頼むとどう変わるかが分かりやすく、AIへの頼み方を覚える練習台になります。その次に、毎日くり返している小さな面倒を1つ仕組みにします。
AIで作った社内システムで、気をつけることは何ですか?
パスワードやサービスをつなぐための鍵を作った物の中に書き込まないこと、保存場所の公開設定、誰が何を見られるかの分け方、バックアップの4つです。総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」も、コードを生成するAIを使う場合は、生成したコードの安全性やセキュリティ面への配慮が重要だとしています。
既製のサービスを契約するのと、自分で作るのはどちらがよいですか?
既製のサービスで足りる業務なら、既製のほうが安全で手間もかかりません。自分で作る価値があるのは、店のやり方に合うものがない、小さな直しを頻繁にしたい、いくつかの管理をひとつにまとめたい、といった場合です。