Column コラム

店舗採用・応募支援

歯科医院・クリニックの採用のコツ|衛生士・助手・受付は求人を分けて出す

この記事の結論

歯科医院・クリニックの採用は、歯科衛生士・歯科助手・受付を1本の求人にまとめず、職種ごとに分けて出すのが近道です。そのうえで、資格で決まっている仕事の範囲を正しく書き、ブランクのある衛生士には勤務時間と復帰の進め方を、助手・受付のパートには最初に覚える仕事を具体的に示すと、それぞれの人に届きやすくなります。

歯科医院の求人でよく見かけるのが、「歯科衛生士・歯科助手・受付スタッフ募集」と3つの職種を1本にまとめた形です。「どの職種でも来てくれたら助かる」という院の事情はよく分かります。けれど求職者の側から見ると、誰に向けた求人なのかが分かりません。資格を持つ人は「助手と同じ扱いなのか」と身構え、資格のない人は「自分には無理そうだ」と画面を閉じてしまいます。

私たちは飲食や美容など店舗ビジネスの採用支援が中心で、自分たちでも店舗を運営し、求人を出し、面接をし、辞められる経験もしてきました。歯科医院を専門に支援してきたわけではありません。ただ、院長と数名のスタッフで回る職場の採用は、少人数の店舗と悩みの形がよく似ています。この記事では、店舗で確かめてきた基本を、歯科医院・クリニックの採用に当てはめてまとめます。

3つの職種は、探している人も探す場所も違う

まず整理します。

職種 応募できる人 応募の前に気にしていること
歯科衛生士 国家資格を持つ人に限られる 資格を生かせる仕事の割合、勤務時間、院長との相性、ブランクへの不安
歯科助手 資格がなくても応募できる 何をどこまで任されるか、教えてもらえるか、医療の現場についていけるか
受付・事務 資格がなくても応募でき、接客や事務の経験も生きる シフト、職場の雰囲気、パソコン作業の量

求人サイトは、職種名や仕事の内容をもとに求人を分類し、その種類の仕事を探している人に表示します。3つを1本にまとめると、どの種類の仕事としても中途半端な扱いになり、それぞれを探している人に届きにくくなります。職種ごとに分けて出せば入口が3つになり、原稿もそれぞれの不安に合わせて書けます。

分け方は職種だけではありません。以前、動画で事務の求人を例にお話ししたことがあります。同じ事務の仕事でも、受付を主にして電話番もする求人と、電話対応を主にして簡単なデータ入力もする求人では、表示される場所が変わります。歯科の受付なら、「受付・会計が主の求人」と「電話での予約対応と事務が主の求人」のように、実際の仕事の比重に合わせて書き分けられます。常勤とパートのように雇用形態で分けるのも、分かりやすいやり方です。

注意したいのは、中身がほとんど同じ求人を並べないことです。媒体側で重複とみなされ、掲載が止まることがあります。院の紹介など共通の部分は3割ほどにとどめ、仕事内容や時間帯は求人ごとに書き分けてください。主な仕事として書くのは、その職種で実際にいちばん時間を使う仕事にします。職種名の付け方は求人タイトル(職種名)の付け方と例文にまとめています。

仕事の範囲は、資格で決まっていることを正しく書く

歯科医院の求人で、とくに気をつけたいのが仕事の範囲の書き方です。歯の表面や歯ぐきの縁についた歯石などを器具で取り除くこと、歯や口の中に薬を塗ることといった予防処置は、歯科衛生士の業務として法律で定められていて、資格のない人は行えません(出典: e-Gov法令検索「歯科衛生士法」第2条・第13条)。歯科診療の補助も、歯科衛生士や看護師など資格を持つ人が行う仕事として定められています(出典: e-Gov法令検索「歯科衛生士法」第2条第2項、「保健師助産師看護師法」第31条)。

求人で避けたいのは、次のような書き方です。

  • 歯科助手の求人で、口の中の処置や診療の補助を任せるように読める書き方
  • 「衛生士の仕事も覚えられる助手」「衛生士業務も兼ねる助手」のように、資格の要る仕事との境目をぼかす書き方
  • 資格が必要な仕事を「未経験でもすぐにできる」と見せる書き方

歯科助手の求人では、たとえば器具の準備・洗浄・滅菌、診療室の準備と片付け、患者さんの案内、受付・会計の補助など、院で実際に任せている仕事を具体的に並べてください。求人の内容について、事実と違う表示や誤解を生む表示をすることは、職業安定法でも禁じられています(出典: e-Gov法令検索「職業安定法」第5条の4、厚生労働省「令和4年職業安定法の改正について」)。境目の曖昧な書き方は、法令の面だけでなく、入ってからの「聞いていた話と違う」にもつながります。

反対に歯科衛生士の求人では、資格を生かせる仕事がどれだけあるかを書きます。予防処置や歯科保健指導が中心なのか、診療の補助が多いのか、訪問診療に出ることがあるのか。ここが曖昧な求人ほど、経験のある衛生士は「助手の仕事ばかり頼まれるのではないか」と警戒します。

ブランクのある歯科衛生士に届ける

資格が要る仕事は、その道を歩んできた人しか応募できないので、探している人の数そのものが限られます。待遇だけで競うと、規模の大きい医院が有利になりがちです。そこで目を向けたいのが、資格を持ちながら今は現場を離れている人です。

日本歯科衛生士会の調査で、歯科衛生士として再就職したい人のうち、再就職に障害が「ある」と答えた人が挙げた内容の上位2つは次のとおりです。

再就職する際の障害 挙げた人の割合
勤務時間 54.6%
自分のスキル 43.7%

出典: 日本歯科衛生士会「第10回 歯科衛生士の勤務実態調査報告書」2025年3月(会員を対象にした調査。障害が「ある」と答えた119人の複数回答)

時間が合うか、腕が戻るか。この2つに具体的に答えている求人は、まだ多くないと感じます。だからこそ差がつきます。

書いておきたいのは、たとえば次のような中身です。

  • 現場に戻った人を受け入れたことがあるか、最初の数週間で何をどの順番で慣らしていくか
  • 何時から何時まで、週何日から相談できるか
  • 急に休まなければならないとき、誰がどう代わりに入るか
  • いまのスタッフに、時短やパートで働いている人がいるか

私たちの店舗でも、急な休みが出たときにどうするかの方針を決めています。働く側から見ると、休むときの段取りが決まっている職場は、それだけで安心材料になります。「ブランク歓迎」「時短相談可」と単語を並べるより、復帰の進め方を具体的に書くほうが伝わります。

もう一つ、届ける場所も考えてください。業種によって、働きたい人がいる場所は違います。同じ調査で、再就職したい人に就職先の探し方を聞いた結果の上位は次のとおりでした。

就職先の探し方 挙げた人の割合
ハローワーク 69.7%
インターネット 47.1%
友人・知人からの紹介 42.6%
求人誌(雑誌の求人欄、新聞・チラシなど) 31.6%
歯科医師会・歯科衛生士会の無料職業紹介 29.0%

出典: 日本歯科衛生士会「第10回 歯科衛生士の勤務実態調査報告書」2025年3月(再就職したいと答えた155人の複数回答)

求人サイトに出すだけで終わらせず、ハローワークにも求人を出し、地域の歯科医師会・歯科衛生士会の無料職業紹介に求人を出せるか問い合わせ、スタッフの知り合いにも声をかけておくと、出会える人が増えます。

助手・受付のパートは、間口を狭めない

一方、歯科助手と受付は資格がなくても応募できる仕事です。ここでは、応募できる人を自分から減らしてしまう書き方に気をつけてください。

  • 「経験者のみ」: 飲食や販売で接客をしてきた人は、受付や患者さんの案内で十分に力を発揮します
  • 「週4日以上」: 学校や家庭の予定がある人が、最初から応募できなくなります
  • 細かい条件の並べすぎ: 曜日や時間の細かな希望は、応募のあとに聞けば足ります

細かな条件を求人に並べるほど応募の間口は狭まり、かといって一人ずつ聞けば院長やスタッフの手がとられる。これは店舗の採用でもよく起きることです。求人ではたとえば「週2日・1日4時間から相談できます」のように入口を広く見せ、具体的な曜日や時間は応募のあとにすり合わせるのが現実的です。

資格のない人がいちばん気にしているのは、「医療の現場で自分にできるのか」です。最初の1か月で何を覚え、何はしなくてよいのかを書いてください。歯科助手は、外から見ると何をしている仕事なのか分かりにくい職種でもあります。器具をそろえている様子や、受付に立っている様子など、実際に仕事をしている写真があると、働く姿を想像しやすくなります。

少人数の医院は、「誰と働くか」で選ばれる

歯科医院は院長と数名のスタッフで回っている職場が多く、人間関係がそのまま働きやすさになります。日本歯科衛生士会の調査データで、診療所に常勤で勤める歯科衛生士のうち勤務先を変わったことがある人に理由を聞くと、「経営者との人間関係」が41.5%で最も多く挙がっていました(出典: 日本歯科衛生士会「第10回 歯科衛生士の勤務実態調査報告書」表4-1。845人の複数回答)。

だから求人では、条件の表だけでなく「どんな人が働いているか」を見せてください。

  • 1枚目には、院長やチーフの顔が分かる写真を置く。できれば笑顔で写る
  • 「面接は私がします。入ってからも私が教えます」のような院長の一言を本文に入れる
  • 診療室、消毒の場所、スタッフが休憩する場所の写真を添える

写真は作り込まなくてかまいません。スタッフの写真は、スマートフォンで撮った自然なもののほうが「本当にこの人たちが働いている」と伝わります。来てほしい人の年代や性別に合わせて写る人を選ぶのではなく、実際に一緒に働くメンバーをそのまま写してください(出典: 厚生労働省「男女均等な採用選考ルール」)。患者さんが写り込んでいないかも確かめてください。撮り方は求人写真の撮り方で詳しく紹介しています。

採用ページに、診療の自慢を持ち込まない

職員の採用を目的とした求人広告は、通常、医療広告のガイドラインの対象にはならないとされています。一方で、医院のホームページはこのガイドラインの対象で、「日本一」「No.1」「最高」のような最上級の表現は、たとえ事実でも使えないとされています(出典: 厚生労働省「医療広告等ガイドライン」2026年3月最終改正)。ホームページの中に採用ページを作るときは、診療の優れている点を競う言葉は持ち込まず、勤務時間や教え方、休みの取り方など、働く人に関わる事実を書くほうが安全です。

応募が来たら、診療時間の外も使ってつなぐ

歯科衛生士の応募者は、いくつかの医院に同時に応募していることも少なくありません。先に連絡がついた医院から、面接が決まっていきます。ところが歯科医院には、診療中は電話に出にくいという弱点があり、応募者の側も日中は働いていて電話に出られないことがあります。

当社がAI面接を導入している支援先のデータでも、AI面接を受けた人の50.9%は平日9〜18時以外の時間帯に受けていました(出典: 当社「店舗採用データ 2026」2026年5月19日〜9月26日、6社・1,117人。店舗ビジネスを中心とした当社支援先の実績で、市場平均でも歯科医院の数字でもありません)。応募者が動ける時間は、診療時間と重ならないことも多いと考えておくのが安全です。

  • 連絡は媒体のメッセージだけに頼らず、メール・SMS・電話も使って、まず気づいてもらう。メールはほかの通知に埋もれやすいので、SMSで「メールをお送りしました」と一言添える
  • 電話は、1回で出なくても間を空けずにもう一度かける
  • 昼休みや診療後など、こちらから連絡できる時間帯を最初のメッセージで伝える
  • 面接の候補日は、こちらから複数出す

面接の前日には、日時と場所を一言送ってください。ビルの上の階にある医院なら、入口や目印の写真を添えると迷わずに来てもらえます。連絡のしかたの全体像は応募対応のスピード設計で解説しています。

入ってからの最初の数週間を決めておく

最後は定着です。少人数の職場では、教える人が決まらないまま「見て覚えて」になりがちです。教える担当の人と、最初の1週間で教えることを紙に書き出しておくだけでも、新人の不安は小さくなります。私たちの店舗でも、教える中身を型にして、誰が教えても同じ順番で覚えられるようにしてきました。

私たちは、採用が決まってから初日に来てもらうまでを最初の山だと考えています。内定から初日までの間も連絡を途切れさせず、持ち物や初日の流れを伝えてください。入ってからは早い段階で一対一で話す時間をとり、困っていることを小さいうちに聞いておくと、ずれが大きくなる前に手を打てます。最初の3か月の組み立て方は新人がすぐ辞める店舗の共通点で詳しく書いています。

まとめ

  • 歯科衛生士・歯科助手・受付は求人を分けて出す。主な仕事や雇用形態でも書き分けて、入口を増やす
  • 仕事の範囲は資格で決まっている。助手の求人で、口の中の処置や診療の補助を任せるように読める書き方はしない
  • ブランクのある衛生士には、勤務時間と復帰の進め方を具体的に書き、求人サイト以外の窓口にも届ける
  • 少人数の医院ほど「誰と働くか」で選ばれる。院長の顔と一言を載せ、応募には診療時間の外も使って早く応える

まず、いま出している求人が職種ごとに分かれているか、助手の仕事の書き方が資格の要る仕事と混ざっていないかを確かめてください。どちらも、広告費をかけずに今日から直せる場所です。

動画で見る

代表の中野谷が発信している YouTube「店舗運営チャンネル【採用と集客】」から、この記事に関係する回です。

【意外と知らない】採用原稿のカテゴリー分け?ターゲットに響く求人内容を分けた作成の仕方
事務の求人を「受付が主」「電話対応が主」のように主な仕事を変えて書き分ける例や、雇用形態で求人を分ける考え方を代表が話しています。
【完全保存版】職種名を変えるだけで応募が倍増!?採用の新常識を徹底解説
職種名によって求人が表示されるカテゴリーが変わる仕組みと、Indeedの市場レポートで職種名ごとの見られ方を確かめる方法を代表が話しています。

よくある質問

歯科衛生士・歯科助手・受付の求人は1本にまとめてもよいですか?

出すことはできますが、それぞれの仕事を探している人に届きにくくなります。職種ごとに求人を分け、仕事の範囲と、応募する人が気にしていることへの答えを職種ごとに書き分けてください。

歯科助手の求人で気をつけることは何ですか?

歯石の除去などの予防処置は歯科衛生士の業務で、歯科診療の補助も資格を持つ人が行う仕事と法律で定められています。資格のない歯科助手の求人では、器具の準備や片付け、受付の補助など実際に任せる仕事を具体的に書き、資格の要る仕事との境目をぼかす書き方は避けてください。

ブランクのある歯科衛生士に応募してもらうには、何を書けばよいですか?

働ける時間帯と週の日数、復帰した人を最初の数週間でどう慣らしていくか、急に休むときにどうするかを具体的に書いてください。求人サイトだけでなく、ハローワークや地域の歯科衛生士会などの窓口、スタッフの知り合いにも求人を届けると、出会える人が増えます。

医院の採用ページに、診療の強みを書いてもよいですか?

職員募集の求人広告は、通常、医療広告のガイドラインの対象外とされています。ただし医院のホームページはガイドラインの対象で、「日本一」のような最上級の表現は事実であっても使えないとされています。採用ページでは、勤務時間や教え方など働く人に関わる事実を中心に書くのが安全です。

← コラム一覧へ 店舗採用データ 2026 →