AIでシフトを作る|店舗のシフト作成をどこまで任せられるか
この記事の結論
店舗のシフト作成でAIに任せられるのは、スタッフの希望の取りまとめ、決めておいたルールに沿った案づくり、休憩・連勤・18歳未満の深夜といったルール違反の点検、人件費の試算までです。誰をどの時間に入れるかの最後の判断、希望が通らなかったスタッフへの説明、確定したシフトを出すことは店長が持ちます。AIに渡す前に、店長が頭の中で守っているルールを言葉にしておくことが前提です。
シフト作成は、店長の仕事の中でも時間のかかるものの1つです。希望を集め、足りない時間帯を埋め、連勤や休憩を気にしながら組み、出したあとに「この日、やっぱり入れません」と言われて組み直す。毎月これをくり返しています。
AIを使えば、このうちのかなりの部分を手伝ってもらえます。ただし、全部を任せられるわけではありません。この記事では、私たちが自分たちの店舗でシフトを回してきた経験をもとに、AIに任せる部分と店長が持つ部分、AIに渡す前に決めておくルールをまとめます。シフトの組み方がスタッフの定着にどう効くかは店舗の定着率を上げるシフト設計を参考にしてください。
シフト作成の手間は「集める・組む・直す・伝える」の4つ
シフト作成と一口に言っても、中身は4つに分かれます。
- 集める — スタッフの希望と、入れない日を集める
- 組む — 必要な人数を、曜日と時間帯ごとに埋める
- 直す — 休憩や連勤、人件費、組み合わせを見て直す
- 伝える — 確定したシフトを全員に知らせ、急な変更に対応する
AIが役に立つのは、主に1から3の作業です。4のうち、確定したシフトを出すことと、希望が通らなかった人への説明は、店長の仕事として残します。
AIに任せやすいこと、店長が持つこと
| 作業 | AIに任せやすいこと | 店長が持つこと |
|---|---|---|
| 希望の取りまとめ | ばらばらに届いた希望を一覧にする、まだ出していない人を洗い出す | 締切を決めて伝える |
| 案づくり | 決めたルールに沿って、人数の過不足がない案を作る | 案を見て直し、確定する |
| 点検 | 休憩・連勤・18歳未満の深夜など、ルールに合わない箇所を指摘する | 指摘が正しいかを確かめる |
| 人件費 | 案ごとの合計時間と人件費を試算する | 売上の見込みと比べて決める |
| 伝える | お知らせの文面の下書き | 確定版を出す、通らなかった希望を説明する |
| 急な欠勤 | 代わりに入れそうな人の候補を出す | 本人に頼む |
AIを入れると、店長は組む手間から解放され、決めることと伝えることに時間を使えるようになります。
AIに渡す前に、シフトの「ルール」を言葉にする
AIにシフトを作らせたとき、いちばん多い失敗は「人数は合っているのに、現場が回らない案」が出てくることです。入ったばかりのスタッフだけの時間帯ができる、閉店まで入った人が翌朝の開店にも入っている。店長が頭の中で当たり前に守っているルールを、AIは知りません。
AIに頼む前に、次のルールを書き出します。
- 必要な人数 — 曜日と時間帯ごとに何人いればよいか。予約や来客が重なる時間帯はどこか
- 組み合わせ — 入って間もないスタッフの日は、教えられる人と同じ時間に入れる。閉店の時間には、締めの作業ができる人を必ず入れる
- 休憩と休日 — 何時間働いたら何分休むか、休憩をどの時間帯に回すか
- 連勤と間隔 — 何日まで続けて入れるか、閉店のあとに翌朝の開店へ入れないか
- 希望の扱い — 締切日と確定日、締切のあとの変更をどう受けるか
- 人件費 — その月に使える時間数の上限
書き出したら、まず1〜2か月はこのルールで店長が手で組んでみて、無理がないことを確かめてからAIに渡すのが安全です。人が型を作り、その型をAIに渡す。この順番は、シフトでも変わりません。
労働時間と休憩には、店の決まりより先に法律のルールがあります。厚生労働省は、使用者は原則として1日に8時間、1週間に40時間を超えて働かせてはいけない、労働時間が6時間を超えるときは45分以上、8時間を超えるときは1時間以上の休憩を与える、少なくとも毎週1日か、4週間を通じて4日以上の休日を与える、と示しています。これを超えて働いてもらうには、時間外・休日労働について労働者の代表などと協定(いわゆる36協定)を結び、届け出る必要があります(出典: 厚生労働省「労働時間・休日」2026年10月確認)。
18歳未満のスタッフには、さらに決まりがあります。年少者に時間外労働や休日労働をさせることは原則として禁止で、午後10時から午前5時までの深夜に働かせることも原則として禁止です(出典: 兵庫労働局「年少者・女性の労働条件」2026年10月確認)。高校生のアルバイトがいる店では、この決まりをルールの一番上に書いておきます。
AIへの頼み方の例
頼み方は、普段の言葉で十分です。書き出したルールとスタッフの希望の一覧を渡したうえで、たとえば次のように頼みます。
- 「来月のシフトの案を作ってください。曜日と時間帯ごとの必要人数と、守るルールはこの紙のとおりです」
- 「この案で、ルールに合っていないところを全部書き出してください。休憩、連勤、閉店後の翌朝、18歳未満の夜の時間を特に見てください」
- 「スタッフごとの合計時間と、店全体の人件費を出してください」
- 「希望どおりにならなかった人と、その日を一覧にしてください」
最後の一覧は、店長がスタッフに説明するときの材料になります。誰の希望が通らなかったかを確定の前に知っておけば、全員に出す前に一声かけられます。
AIの案は、そのまま確定しない
AIの案は、ルールに沿って穴を埋めたものです。店長は、確定する前に次の5つを見ます。
- 法律と店のルール — AIの点検に頼り切らず、18歳未満の夜の時間と休憩だけは自分の目でも確かめる
- 偏り — 特定の人に、閉店や忙しい日が集まっていないか
- 現場の回り方 — その日の予約や作業の重さに対して、その顔ぶれで回せるか
- 希望とのずれ — 通らなかった希望に、理由を説明できるか
- 人件費 — 売上の見込みに対して、時間数が多すぎたり少なすぎたりしないか
人件費の枠の決め方は店舗の人件費の考え方に書いています。
確定したシフトをスタッフに出すのも、店長の仕事です。AIに文面の下書きを作らせても、送るボタンは人が押します。
代表・中野谷のひとこと
これ、送付だけはAI化しちゃうとちょっとリスクが高いので、送付は最後にお願いしたいと思っているんですけど。
採用の連絡を話していたときの言葉ですが、シフトでも同じです。相手に届くものは、人が最後に読んでから出します。
希望の集め方を先にそろえる
AIに渡す希望の形がばらばらだと、取りまとめにも手間がかかります。私たちの店舗では、紙やLINEで集めていたシフトの希望を、スタッフが決まった形で入れる1つの画面にまとめました。出られる・条件つきで出られる・出られないの3つに一言を添えて出してもらい、店長が確定するまでは、ほかのスタッフに途中の希望を見せないようにしています。途中の希望が見えると、「あの人が休むなら私も」と調整がこじれやすいからです。
集める形がそろうと、まだ出していない人の洗い出しや一覧づくりは、そのままAIに任せられます。
スタッフの事情は、AIに入れない
シフトの希望には、体調や家族の事情、学校や別の仕事の予定など、個人的な理由がついてくることがあります。シフトを組むのに必要なのは「この日は入れない」という事実だけです。理由は店長が直接聞いて受け止め、AIには入れない日だけを渡します。
個人情報保護委員会は、生成AIサービスを使う人に向けて、サービスを提供する事業者の利用規約やプライバシーポリシーなどを十分に確かめ、入れる情報の中身をふまえて利用を判断するよう呼びかけています(出典: 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」令和5年6月2日)。スタッフの名前を入れるかどうかも、会社として使うサービスの規約と設定を確かめてから決めます。
始めるなら、手で作った表とAIの案を並べる
いきなりAIの案で確定するのは避けます。最初の1か月は、いつもどおり店長が手で組み、同じ材料でAIにも案を作らせて、2つを並べて見ます。AIの案のどこを直したくなったかを書き留めておけば、それがそのまま、AIに渡すルールの書き足しになります。AIの案と店長が確定したシフトを分けて残しておく考え方は、AIに判断を任せるときのルールで詳しく書いています。
AIに任せた作業の抜けに最初に気づくのは、たいてい現場のスタッフです。私たちの店舗でも、AIに任せている作業のずれを、スタッフが見つけて教えてくれることがあります。
代表・中野谷のひとこと
この間スタッフに怒られて。言っておきます、と言ってAIに言っている感じです。そういうのができたりするのがAIです。
スタッフの指摘をAIへのルールに足していくと、案は少しずつ店に合ったものになります。直すところがほとんどなくなってから、AIの案を出発点に使い始めてください。
まとめ
- AIに任せられるのは、希望の取りまとめ、ルールに沿った案づくり、ルール違反の点検、人件費の試算まで。確定と説明、確定版を出すことは店長が持つ
- AIに渡す前に、必要人数・組み合わせ・休憩と休日・連勤・希望の扱い・人件費のルールを言葉にする。労働時間と18歳未満の決まりは、法律のルールを一番上に置く
- 最初はAIの案と手で作った表を並べ、直したところをルールに足していく。スタッフの個人的な事情はAIに入れない
次の一歩として、先月のシフトを見ながら、店長が無意識に守っていたルールを10個書き出してみてください。それが、AIにシフトを頼むときの最初の材料になります。
よくある質問
AIにシフトを全部作らせてもよいですか?
案を作るところまでは任せられますが、確定は店長がしてください。AIは、スタッフどうしの組み合わせの相性や、その日の予約の重さ、言葉にしていない事情までは分かりません。AIの案を店長が見て直し、確定してから全員に伝えます。
AIにシフトの案を作らせるとき、何を渡せばよいですか?
曜日と時間帯ごとに必要な人数、一人ひとりの希望と働ける時間、組み合わせのルール(入って間もない人の日は教えられる人と入れる、など)、休憩と連勤の決まり、その月に使える時間数の上限です。ルールを渡さないと、AIは人数を埋めるだけの案を出します。
労働時間や休憩のルールも、AIが守ってくれますか?
渡したルールに沿って点検させることはできますが、合っているかは人が確かめます。厚生労働省は、労働時間は原則1日8時間・1週間40時間まで、6時間を超えるときは45分以上・8時間を超えるときは1時間以上の休憩、少なくとも毎週1日の休日(または4週間で4日以上)を定めています。18歳未満のスタッフは、時間外・休日労働と午後10時から午前5時までの深夜の勤務が原則として禁止です。
スタッフが希望を出せない理由(体調や家庭の事情)も、AIに入れたほうがよいですか?
入れないでください。シフトを組むのに必要なのは「この日は入れない」という事実だけです。理由は店長が直接聞き、AIには入れない日だけを渡します。