Column コラム

店舗経営とAI

お客さまへの返信・LINEをAIで下書きする|店舗の使い方と注意点

この記事の結論

店舗のお客さまへの返信は、AIに下書きと返信漏れの確認を任せ、送るかどうかは人が決める形がいちばん失敗しません。営業時間や予約方法のような決まった答えは仕組みで返し、予約の変更・お詫び・お金の話のように相手の気持ちが動くやりとりは、人が読んでから送ります。

店舗に届くお客さまからのメッセージは、たいてい忙しいときに来ます。施術中、ランチのピーク、閉店作業の最中。後で返そうと思っているうちに埋もれてしまい、気づいたときには翌日になっている。急いで返すと、言葉が足りずにそっけない文章になってしまう。どの店でも起きていることだと思います。

こうした返信の仕事に、AIはとても向いています。ただし、AIに「返信させる」のではなく、「返信を手伝わせる」のが大事です。この記事では、私たちが自分の会社と店舗で実際にやっている使い方をもとに、お客さまへの返信やLINEをAIで下書きするときの線の引き方をまとめます。

AIに任せられるのは「下書き」「漏れの発見」「記録」の3つ

お客さまとのやりとりで、AIに任せて効果が大きいのは次の3つです。

  • 下書き — 届いたメッセージに対して、お店の言葉づかいで返信の下書きを作る
  • 漏れの発見 — まだ返していないメッセージや、返事を約束したまま止まっているものを洗い出す
  • 記録 — 長いやりとりを要約し、「何を聞かれて、どう答えたか」を残す

私たちの実感では、店舗でいちばん効くのは2番目の「漏れの発見」です。文章が多少ぎこちないことより、返事が来ないことのほうが、お客さまをがっかりさせてしまうからです。

代表・中野谷のひとこと

メールの見落としってある?と聞いたら、教えてくれたりします。全部じゃないですけど、LINEにもAIを入れておいて、これ返信してないですよ、と朝に言われたりしています。

3番目の「記録」も、続けるほど効いてきます。よく聞かれる質問と、それにどう答えたかが貯まっていくと、それ自体がお店の知識になります。新しいスタッフが入ったときに、そのまま「よくある質問と答え」として渡せます。

「送る」はAIに渡さない

一方で、送信そのものはAIに渡さないことをおすすめします。私たちも、お客さまとのLINEのグループには、やりとりを記録するためのAIを入れていますが、そこから返信させることはしていません。

代表・中野谷のひとこと

ゆくゆくはそこから返信させる、という話もしてたんですけど、AI感が強すぎるのでやめています、今のところ。AIから返信が来たら、こいつら何も考えてないだろうと思われるだろうなと思って。

AIの文章は、整っているぶん「機械が返している」と相手に伝わりやすいものです。中身が正しくても、受け取った側が「ちゃんと読んでもらえていない」と感じれば、お店への信頼は下がります。AIが作った下書きを人が読み、必要なら自分の言葉で一言足してから送る。このひと手間が、お店らしさを守ります。

定型の自動返信と、AIの下書きは分けて考える

すべてのメッセージに人が下書きを確認していたら、手間はあまり減りません。そこで、答えが決まっている質問と、そうでない質問を分けて考えます。

種類 例 返し方
答えが決まっている 営業時間、場所、駐車場、予約の方法、支払い方法 事前に用意した答えを仕組みで返す
状況によって答えが変わる 空き状況、メニュー選びの相談、要望の確認 AIが下書きし、人が確認して送る
相手の気持ちが動く 予約の変更、お詫び、クレーム、料金や返金 AIの下書きは参考程度。人が考えて送る

答えが決まっている質問には、LINE公式アカウントの機能も使えます。LINEヤフーは「AIチャットボット(β)」を、届いたチャットの内容をAIが判別し、事前に設定したQ&Aリストから回答を選んで返す機能として案内しています。あらかじめ回答を設定しておく必要があり、該当する回答がない場合はその旨を返すこと、実際のやりとりで使うには有料の「チャットProオプション」への申し込みが必要なことも示されています(出典: LINEヤフー for Business「AIチャットボット(β)機能とは」2025年11月12日公開・2026年10月確認)。

ここでも、答えの中身を決めるのは人です。まずは、よく聞かれる質問を10個ほど書き出し、それぞれの答えを店長が決めてから仕組みに入れてください。

人が必ず読んでから送るやりとり

次のやりとりは、AIの下書きがあっても、人が読んで決めてから送ります。

  1. 予約の変更・キャンセル — 日時の取り違えは、そのまま当日のトラブルになります
  2. お詫び・クレームへの対応 — 何に対して謝るのか、どこまで約束するのかは、お店が決めることです
  3. 料金・返金の話 — 金額や条件の誤りは、後から取り消しにくいものです
  4. 体調や施術についての相談 — 効果を言い切る表現や、医療の判断に踏み込む表現が混ざっていないかを確かめます
  5. 初めての問い合わせ — 最初の一通の印象が、来店するかどうかを左右します

AIの下書きには、丁寧すぎて回りくどい文章や、お店が約束していないことを書いてしまう文章が混ざることがあります。読む人は、正しさと同時に「このお店の人が書いたように読めるか」を見てください。

下書きの質を上げるのは「お店の型」

AIの下書きがいまひとつなのは、たいてい、お店のことを知らないまま書かせているからです。下書きの質は、渡す材料で決まります。

  • これまでの返信で「これは良かった」と思うものを集めて、見本として渡す
  • 使わない言葉、書いてはいけないこと(約束できない日時、効果の言い切りなど)を書き出しておく
  • お店の呼び方、スタッフの呼び方、語尾の雰囲気を決めておく
  • 直したときに「なぜ直したか」を一言残す

最後の「なぜ直したか」が、いちばん大事です。直した結果だけでなく理由が残っていると、次の下書きを頼むときに「こういう考え方で書いて」とAIに渡しやすくなります。人がまず型を作り、それをAIに渡す。この順番は、返信の仕事でも同じです。

応募者への連絡も、考え方は同じです。応募直後の連絡の設計は応募対応のスピード設計で、請求や支払いのように相手に届くお金の連絡の扱いは経理・バックオフィスをAIで減らす方法で書いています。

お客さまの情報の扱いを先に決める

返信の下書きをAIに作らせると、お客さまの名前や連絡先、来店の履歴、場合によっては体調のことまでAIに渡すことになります。お客さまの情報は、会社として契約し、入力した内容の扱いを確かめたツールの中で扱ってください。スタッフが個人で使っている無料のAIに、やりとりをそのまま貼る使い方は避けます。

どの情報をどこまでAIに入れてよいかの決め方は、生成AIを社内で使うときの情報の扱いにまとめています。

まとめ

  • AIに任せるのは、返信の下書き、返信漏れの発見、やりとりの記録の3つ。送るかどうかは人が決める
  • 答えが決まっている質問は仕組みで返し、予約の変更・お詫び・お金の話・体調の相談・初めての問い合わせは、人が読んでから送る
  • 下書きの質はお店の型で決まる。良い返信の見本と、直した理由を残していく

まずは、ここ1ヶ月で届いた質問を書き出して、「答えが決まっている」「状況によって変わる」「気持ちが動く」の3つに分けてみてください。答えが決まっている質問から仕組みに渡すと、人が向き合うべきやりとりに時間を使えるようになります。

よくある質問

お客さまへのLINEの返信を、AIに自動で送らせてもよいですか?

営業時間や場所、予約方法のように答えが決まっている質問なら、仕組みで返して問題ありません。それ以外のやりとりは、AIに下書きを作らせ、人が読んでから送ることをおすすめします。AIの文章は、受け取った側に「機械が返している」と伝わりやすく、お店への信頼を下げることがあるからです。

AIに任せると、どんな作業が楽になりますか?

返信の下書きづくり、返信していないメッセージの洗い出し、長いやりとりの要約と記録の3つです。とくに店舗では、接客の合間に返信が漏れやすいので、「まだ返していないもの」をAIに教えてもらうだけでも効果があります。

人が必ず確認してから送るべきなのは、どんなやりとりですか?

予約の変更やキャンセル、お詫びやクレームへの対応、料金や返金の話、体調や施術についての相談、初めての問い合わせです。相手の気持ちが動く場面や、言い方ひとつでトラブルになり得る場面は、人が読んで決めます。

お客さまの情報をAIに入れても大丈夫ですか?

会社として契約し、入力した内容の扱いを確認したツールの中で扱うのが前提です。個人で使っている無料のAIに、お客さまの名前や連絡先、体調のことが書かれたやりとりをそのまま貼るのは避けてください。

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