多店舗展開の店舗採用を仕組み化する方法|店長の個人技を全店の型にする5つの手順
この記事の結論
多店舗の採用を仕組み化するには、まず全店を同じ採用の数字で並べ、どの店のどの段で詰まっているかを見えるようにすることです。そのうえで、原稿・媒体運用・応募者への初動連絡は集め、面接と受け入れは店舗に残す。改善は1回に1か所ずつ試し、効いたものを全店に配ります。
- A店は毎月採れているのに、B店は半年ずっと欠員のまま
- 採用が上手い店長が異動した途端、その店の応募が止まった
- 店舗が増えるほど、採用の相談が本部に集まって回らなくなった
多店舗展開の採用でよく起きる症状です。共通しているのは、店舗の採用が「店長の個人技」で回っていること。仕組み化とは、この個人技を、誰がやっても近い結果が出る手順に置き換えることです。この記事では、多店舗の採用を仕組み化する手順を5つに分けて説明します。
なぜ多店舗になると採用が属人化するのか
1店舗のうちは、オーナーが自分で原稿を書き、自分で電話をかけ、自分で面接します。判断が1人に閉じているので、うまくいった・いかなかったの学習も速い。ところが店舗が増えると、この作業が店長ごとにばらばらになります。
ばらばらになると、まず比べられなくなります。A店とB店で見ている数字が違えば、「A店のやり方をB店に移す」という判断そのものができません。次に、失敗が共有されません。B店が3ヶ月かけて学んだことを、C店がまた一から学び直す。店舗が増えるほど、この学び直しのコストが積み上がります。
もう1つの理由は、店長がそもそも採用の専門家ではないことです。店長は店舗運営のプロですが、売上・シフト・教育を回しながら採用まで抱えると、忙しい店から順に採用が後回しになり、人が足りなくなって、さらに忙しくなります。仕組み化の目的は、店長から仕事を取り上げることではなく、店長が店長にしかできない仕事に集中できる状態を作ることです。
手順1: 全店を同じ採用の数字で並べる
最初にやるのは、全店共通の物差しをそろえることです。店舗の採用は、次の流れで人数が減っていきます。
表示 → クリック → 応募 → 連絡がつく → 面接 → 採用 → 初日出勤 → 定着
本部の会議に「応募が少ない」とだけ報告が上がってくる状態は危険です。そもそも求人が表示されていないのか、表示されているのにクリックされないのか、クリックされているのに応募されないのかで、打ち手はまったく別物だからです。
参考として、当社の支援先34社のIndeed有料配信(2026年7月31日〜8月29日頃の30日間)を合算すると、表示からクリックへは6.4%、クリックから応募へは3.27%でした。同じ期間に有料配信した求人589件のうち49.3%は、30日間で応募が0件でした(出典: AccompanyOn「店舗採用データ 2026」2026年。当社支援先の実績で、市場平均ではありません)。つまり、会社全体では応募が来ていても、求人単位で見ると半分近くが応募まで届いていないことがある、ということです。多店舗では、全店の合計ではなく店舗ごと・求人ごとに並べて初めて、どこから手を付けるべきかが見えます。
手順2: 本部に集める仕事と、店舗に残す仕事を分ける
すべてを本部に集めても、すべてを店舗に任せても、うまくいきません。分ける基準は「繰り返すほど上手くなる仕事か、その場にいる人にしかできない仕事か」です。
本部(または外部)に集めたほうがよい仕事:
- 求人原稿の作成と改善(書き方の型は全店で共通化できる)
- 媒体の運用と予算配分(全店を横断して見たほうが無駄が減る)
- 応募者への最初の連絡と面接日程の調整(速さが勝負で、店長の片手間では遅れる)
店舗に残すべき仕事:
- 面接(一緒に働く人が会うことに意味がある)
- 受け入れと教育(初日以降は現場でしか回らない)
- 職場の写真の用意(作り込んだ写真より、現場のリアルな写真のほうが伝わる)
とくに応募者への最初の連絡は、集めた効果が出やすいところです。シフトに入っている店長が応募に気づくのを待つ構造そのものが、取りこぼしの原因になっています。連絡の設計は応募対応のスピード設計で詳しく書いています。本部に専任の担当を置けず外部に任せる場合は、店舗の採用代行で任せられることと店舗に残ることを整理しています。
手順3: 求人は店舗・職種ごとに分け、予算はまとまりで配る
多店舗の求人を「全店共通で1本」にまとめていないでしょうか。Indeedの掲載基準では、1つの求人情報につき「1職種、1勤務地」が原則とされています。また、実際の勤務地以外の場所の求人を投稿することも禁じられています(出典: Indeed「Indeedで求人情報が表示されない理由。掲載基準を見直してみよう」2026年9月確認)。店舗ごと、さらにホールとキッチンのように職種ごとに求人を分けるのが基本です。分けて出すと、探している人の検索軸にも届きやすくなります。
そのうえで悩ましいのが予算の配り方です。全店に同じ額を配るのは公平に見えますが、欠員がない店にも同じ額が流れ、いま人が必要な店に厚みが出ません。私たちは、次のような切り口で求人をまとめて予算を配ることが多いです。
- エリアでまとめる(時給相場や競合の状況が近い店同士)
- 職種でまとめる(調理と接客では応募の集まり方が違う)
- 緊急度でまとめる(いま欠員が出ている店を1つに)
- ブランドでまとめる(複数ブランドを運営している場合)
まとめ方次第で、予算が一部の求人に偏ったり、逆に人が必要な店に届かなかったりします。Indeedの予算の考え方はIndeedのクリック単価の仕組みと予算の決め方も参考にしてください。
手順4: 改善は1か所ずつ試し、効いたものを全店に配る
仕組み化の本体はここです。1店舗で効いた改善を、全店に配れる形にする。このループが回り始めると、店舗が増えるほど採用が強くなります。
鉄則は、改善を一度に1か所ずつにすることです。職種名と写真と給与の見せ方を同時に変えると、何が効いたのか分からず、ほかの店に配れる知見になりません。1回に1つ変えて、しばらくしてから数字を見る。地味ですが、これが「どの店でも再現できる」ことの正体です。
私たちは自社でも店舗を運営していて、職種名の出し分けや写真の差し替えといった打ち手は、まず自社の求人で試してから、お客様の店舗に広げるようにしています。多店舗の会社なら、1店舗を「試す店」に決めて同じことができます。
手順5: 採用数だけでなく、初日出勤と定着まで見る
最後に、多店舗だからこそ見える数字があります。どの媒体・どの原稿から来た人が長く続いているか、です。
同じ費用でも、応募は多いがすぐ辞める経路と、応募は少ないが長く働いてくれる経路があります。1店舗では人数が少なくて判断できませんが、全店を合わせれば傾向が見えてきます。採用人数だけで媒体を評価せず、初日に来たか、3ヶ月続いたかまで追って予算を寄せる。多店舗運営の強みは、このデータの厚みです。
初日に来てくれるかどうかは、その後の定着を占う大事なサインです。採用が決まってから初日までの連絡を切らさない運用は、全店共通のルールにする価値があります。
まとめ
- 多店舗の採用が属人化するのは、店舗ごとに見ている数字が違うから。まず全店を同じ項目で並べる
- 原稿・媒体運用・初動連絡は集め、面接と受け入れは店舗に残す。求人は店舗・職種ごとに分ける
- 改善は1か所ずつ試し、効いたものを全店に配る。採用数だけでなく初日出勤と定着まで見る
次の一歩は、直近1ヶ月の全店の応募数を1枚の表に並べることです。そこに表示回数とクリック数を足せば、どの店のどの段から手を付けるべきかが見えてきます。
動画で見る
代表の中野谷が発信している YouTube「店舗運営チャンネル【採用と集客】」から、この記事に関係する回です。
ホールとキッチンのように仕事を分けて原稿を出し、探している人の検索軸に届かせる考え方を代表が解説しています。
よくある質問
多店舗の採用が店舗ごとにばらつくのはなぜですか?
店舗ごとに見ている数字とやり方が違い、比較も共有もできないからです。まず全店を同じ項目(表示・クリック・応募・面接・採用・初日出勤)で並べると、どの店のどこが弱いかが見えます。
多店舗の採用で本部に集めたほうがよい仕事は何ですか?
求人原稿の作成と改善、媒体の運用と予算配分、応募者への最初の連絡と面接日程の調整です。どれも反復で上手くなる仕事で、店長がシフトの合間にやると遅れやすい部分です。
店舗に残すべき採用の仕事は何ですか?
面接と受け入れ・教育です。一緒に働く人が会い、現場で迎えることに意味があります。職場の写真を用意するのも店舗の役割です。
多店舗の求人は1本にまとめてもよいですか?
Indeedの掲載基準では、1つの求人情報につき1職種・1勤務地が原則とされています。店舗ごと・職種ごとに求人を分けて出すのが基本です。