求人の給与の書き方|時給の幅と2026年最低賃金改定(東京1,280円)
この記事の結論
店舗アルバイトの求人の給与は、求職者が判断に使う下限の時給を正直に置き、上限を書くなら「何をすればいくらになるか」を本文で具体的に示します。2026年度の最低賃金は最も高い東京都でも1,280円(10月1日発効)で、発効日は都道府県ごとに10月1日から12月2日まで分かれるため、掲載中の求人の下限と研修中の時給が勤務地の新しい額を下回らないか、発効日までに確かめます。
アルバイトの求人で、求職者がいちばん確実に見るのは時給です。一覧でも詳細ページでも、まず数字に目が行きます。それなのに給与欄は「時給○○円〜」の一行で済まされていることが少なくありません。この記事では、店舗のアルバイト求人の給与欄を、時給の幅・上がる条件・手当・法令の4つの面から具体的に整理します。2026年10月1日から12月2日にかけて順に発効する最低賃金の改定で、何を見直せばよいかも扱います。
原稿全体での給与の見せ方(一覧で見劣りしない水準を頭に出す、など)は「求人原稿の書き方|クリックと応募が変わる職種名・写真・給与の見せ方」にまとめているので、ここでは給与欄の中身を掘り下げます。
求職者は下限しか見ていない前提で書く
「時給1,300円〜1,600円(例)」と書いたとき、求職者の頭に残るのは1,300円のほうです。上限は「条件がそろえば、いつかもらえるかもしれない額」として割り引いて読まれます。
だから給与欄を直すときの順番は、上限を上げることではなく、下限を正しく置くことです。
- 下限は、実際に多くの人が入社時に受け取る額にする — 下限をいくら低めに書いても応募は増えません。かといって、ほぼ誰も受け取らない額を下限にするのも逆効果です
- 上限は、届く人がいる額にする — ほとんど誰も届かない上限を掲げると、職業安定法第5条の4が禁じる「誤解を生じさせる表示」になりかねません(出典: e-Gov法令検索「職業安定法」2026年9月確認)
- 幅が広いなら、理由を書く — 「経験・能力による」の一言では、読む側はどこに自分が入るのか分かりません
上がる条件を「行動」で書く
上限と下限の間を埋めるのが、時給が上がる条件です。ここを具体的に書くと、給与欄は一気に信用されます。
例(東京都内の架空の焼肉店。金額は説明用です):
時給1,300円〜1,500円
・入社時 1,300円
・ホールの全ポジション(案内・オーダー・会計)を一人で担当できたら +50円
・キッチンの焼き場も担当できたら +100円
・22時以降は深夜の割増賃金を別途支給
ポイントは、条件を「頑張り」ではなく「できるようになること」で書くことです。「評価に応じて昇給」より「この仕事ができたら○円」のほうが、読む人は自分がどこまで届きそうかを想像できます。書いた条件は実際の運用と一致させてください。原稿にだけある昇給ルールは、入ってからの不信につながります。
求人を分けると、時給の見せ方も分けられる
1つの求人で経験者も未経験者も募集すると、時給の欄は「1,300円〜1,600円」のように幅が広くなりがちです。代表の中野谷がよく勧めるのは、経験者向けと未経験者向けで求人そのものを分け、時給も変えて出すことです。
代表・中野谷のひとこと
いちばん分かりやすいのは、経験者向けと未経験者向けでちょっと変えてあげて、時給も変えてあげること。そうすると、重複したよとは判断されないので。
(YouTube「【完全保存版】職種名を変えるだけで応募が倍増!?採用の新常識を徹底解説」より)
未経験者向けには研修の進み方と入社時の時給を、経験者向けには経験を反映した時給を、それぞれ一番上に書けます。中身が実際に違うので、求人を分けたときに同じ求人を並べたと判断されにくくなる、という利点もあります。
時間帯で分けるのも同じ考え方です。22時以降の枠には深夜の割増賃金が乗るので、夜の枠だけの求人にすると、その枠の時給を正しく頭に出せます。分けた求人を放置せず、給与も含めて中身を最新に保つことは、職業安定法第5条の4でも求められています(出典: 同上)。
手当・交通費・研修中の時給は「いくら・いつまで」で書く
給与欄の下半分は、基本の時給以外のお金の話です。ここがあいまいだと、応募前の不安がそのまま残ります。
- 交通費 — 「交通費支給」だけでなく、上限額(例: 1日○○円まで)や支給の条件を書く
- 研修中の時給 — 研修期間の時給を分けるなら、額と期間(例: 最初の○時間、または○回目の出勤まで)を書く。その額も勤務地の最低賃金を下回らないことが前提です
- まかない・社割 — 給与ではありませんが、飲食店や小売店では実質的な待遇として見られます。有無と条件を書く
- 手当 — 深夜、土日、資格など、何に対していくら付くのかを分けて書く
2026年10月からの最低賃金改定で見直すこと
最低賃金は毎年改定され、都道府県ごとに額も発効日も違います。厚生労働省の一覧によると、2026年度の地域別最低賃金(答申された改定額)は全国加重平均で1,177円です。いちばん高いのは東京都の1,280円(10月1日発効)で、神奈川県1,279円、大阪府1,231円と続き、1,300円以上になった都道府県はありません。発効日は都道府県によって10月1日から12月2日まで分かれていて、たとえば京都府は11月16日、熊本県は12月1日、沖縄県は12月2日です(出典: 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」「令和8年度地域別最低賃金全国一覧」2026年10月確認)。
「最低賃金が1,300円になるのはいつからか」と調べている方もいると思いますが、2026年度の改定では、まだどの都道府県も届いていません。次の改定額と発効日は、決まったときに厚生労働省の一覧で公表されます。求人の側では、時給の下限を「いまの勤務地の最低賃金を下回らない額」に保ち続けることのほうが先に大事になります。
掲載中の求人で確かめたいのは、次の3つです。
- 下限の時給 — 勤務地の新しい最低賃金を下回っていないか。発効日を過ぎても出しっぱなしの求人がいちばん危険です
- 研修中や見習い期間の時給 — 基本の時給は直しても、研修中の時給だけ古いまま残っていることがよくあります
- 複数の勤務地をまたぐ求人 — 店舗によって都道府県が違えば、発効日も額も違います。店舗ごとに確かめます
改定のたびに下限を上げるなら、それを機に「上がる条件」の欄も見直すのがおすすめです。下限だけを上げると、経験を積んだ人との差が縮まり、「続けても上がらない店」に見えてしまうことがあるからです。
固定残業代がある場合の書き方
アルバイトでは少ないものの、店長候補や社員の求人を同じ店で出すなら押さえておきたい点です。厚生労働省は、固定残業代を賃金に含める場合、次の3つをすべて明示するよう求めています(出典: 厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」2026年9月確認)。
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業代に関する労働時間数と金額などの計算方法
- その時間を超える時間外労働・休日労働・深夜労働に対して、割増賃金を追加で支払う旨
「月給○○万円(みなし残業含む)」だけでは足りません。給与の書き方全般の法令面は、職業安定法第5条の3(労働条件の明示)とあわせて、個別の判断は所轄の労働局や社会保険労務士などの専門家にご確認ください。
給与を上げる前に、見られているかを確かめる
最後に、給与欄を直しても応募が増えないケースについて触れておきます。当社の支援先のアルバイト・パートの求人では、Indeedで有料配信した298求人のうち45.2%が、30日間で応募0件でした(出典: AccompanyOn「店舗採用データ 2026」2026年。2026年7月31日〜8月29日頃の30日間・当社支援先の実績で、市場平均ではありません)。応募が来ない理由は給与だけではなく、そもそも表示やクリックの段で止まっていることも多いということです。
時給を上げる判断は、店の利益に直結します。上げる前に、表示回数・クリック率・応募率のどこで止まっているかを確かめてください。切り分け方は「Indeedで応募が来ない7つの原因と改善チェックリスト」で解説しています。
まとめ
- 求職者は下限の時給で判断する。下限は実際に多くの人が受け取る額にし、上限は届く人がいる額にする
- 時給が上がる条件は「できるようになること」で書く。経験者向けと未経験者向け、夜の枠などで求人を分けると、時給の見せ方も分けられる
- 交通費・研修中の時給・手当は「いくら・いつまで」まで書く
- 2026年度の最低賃金は最も高い東京都で1,280円。都道府県ごとに10月1日から12月2日にかけて発効する。下限、研修中の時給、店舗ごとの勤務地を確かめる
- 固定残業代があるなら、基本給・時間数と金額・超過分の支払いの3つを明示する
次の一歩は、掲載中の求人の給与欄をすべて書き出して、勤務地ごとの新しい最低賃金と発効日を横に並べることです。研修中の時給まで含めて、下回っているものがないかを確かめてください。
動画で見る
代表の中野谷が発信している YouTube「店舗運営チャンネル【採用と集客】」から、この記事に関係する回です。
経験者向けと未経験者向けで求人を分け、時給も変えて出すと重複と判断されにくい、という話を代表がしています(職種名の付け方が中心の回です)。
よくある質問
アルバイト求人の時給は幅を持たせて書いてもよいですか?
書けます。ただし求職者は下限の数字で判断するので、下限は実際に多くの人が受け取る額にし、上限を書くなら到達する条件を本文に書きます。ほとんど誰も届かない上限を掲げると、誤解を生じさせる表示になりかねません。
2026年の最低賃金はいつから変わりますか?時給1,300円になりますか?
厚生労働省の令和8年度の一覧では、地域別最低賃金の発効日は都道府県ごとに異なり、早いところで10月1日、遅いところで12月2日です。最も高い東京都が1,280円で、1,300円以上になった都道府県はありません。勤務地の都道府県の額と発効日を確認し、それまでに掲載中の求人を直します。
固定残業代(みなし残業)がある場合、求人にはどう書けばよいですか?
厚生労働省は、固定残業代を除いた基本給の額、固定残業代に関する労働時間数と金額などの計算方法、その時間を超えた分の割増賃金を追加で支払う旨の3つをすべて明示するよう求めています。
研修期間の時給を低くしてもよいですか?
研修中の時給を分けて書くこと自体はよく行われていますが、その額も勤務地の最低賃金を下回らないことが前提です。研修中の時給と期間は、求人の給与欄にはっきり書きます。