採用代行で失敗する典型パターンと防ぎ方
この記事の結論
採用代行の失敗の多くは、採用を「表示・クリック・応募・連絡・面接・採用」の段に分解せず、応募数だけを見ていることから起きます。契約前に目標を採用人数と採用単価で合意し、月次で詰まっている段を特定し、3ヶ月で見直す場を設けておけば、典型的な失敗はかなり防げます。
採用代行がうまくいかなかった話には、驚くほど共通の型があります。「応募は増えたのに採用できなかった」「レポートは毎月届くが何が変わったのか分からない」「気づいたら媒体費だけ膨らんでいた」。原因を分解すると、発注側の設計不足に起因するものと、代行側のやり方に起因するものの2つに大別できます。ここでは典型パターンを7つ挙げ、それぞれ「なぜ起きるか」と「どう防ぐか」をセットで整理します。契約前のチェックにも、運用中の見直しにも使える内容です。
前提: 失敗の多くは「どの段で落ちているか」を見ていないことから始まる
具体的なパターンに入る前に、判断の土台を共有します。採用は「求人が表示される → クリックされる → 応募が来る → 連絡がつく → 面接を予約する → 面接を実施する → 内定を承諾してもらう → 入社・定着」という流れで進み、各段階で人数が減っていきます。つまり1名を採用するには、その何倍もの応募が要るということです。
失敗しているプロジェクトは、ほぼ例外なくこの流れを分解していません。「応募が少ない」の一言で片づけると、表示されていないのか、見られているがクリックされていないのか、クリックされているが応募されていないのかが分からず、打ち手が的外れになります。以下のパターンは、すべてこの「分解していない」ことの派生形だと思って読んでください。
発注側で起きる失敗3パターン
パターン1: 目的が「応募数」になっている
応募数をKPIに置くと、条件を緩めて母数を増やすだけの運用になりがちです。応募は増えるのに、面接に来ない・辞退される人が増え、現場は疲弊して「採用代行は効果がなかった」という結論になります。
防ぎ方は、契約時に目標を「採用人数」と「採用単価」で合意すること。応募数は途中経過の指標であって、成果指標ではありません。
パターン2: 丸投げして現場情報が出てこない
求人原稿でクリック率と応募率を左右するのは、スペックの羅列ではなく「誰と働くか」「1日の流れはどうか」「どんな人が活躍しているか」といった現場の情報です。写真も同じで、作り込んだ画像より実際の職場のリアルな写真のほうが反応が良い傾向があります。ここを代行会社が用意することはできません。
防ぎ方は、キックオフ時に「写真の撮影」と「現場ヒアリングの時間」を必ず日程として押さえること。この30分を惜しむと、当たり障りのない原稿ができあがります。
私たちは採用代行を「口出しするコンサル」ではなく、週に何日か来てくれる人事担当が社内にいる、くらいの距離感で捉えてもらうのがよいと考えています。手を動かす部分は任せてよい。ただ、その人事担当に現場のことを教えるのは、社長や店長にしかできません。
パターン3: 媒体費と代行費を別々に管理している
代行費は安いのに、応募を出すために媒体費を積み増していて、総額では割高になっているケースです。逆に、媒体費をぎりぎりまで絞って「応募が来ない」と代行会社を責めている場合もあります。
防ぎ方は、毎月「代行費+媒体費=総額いくらで、何名採用できたか」を1行で管理すること。採用単価という共通言語ができると、議論が感情論になりません。
あわせて確認したいのが、代行会社の報酬がどう決まっているかです。求人広告を扱う会社の多くは、広告費が増えるほど自社の売上も増える構造になっています。悪気の問題ではなく構造の問題ですが、この構造のもとでは「応募が来ないなら、広告費を増やしましょう」という提案が出やすくなります。私たちは求人広告の会社に長くいたので、この構造をよく知っています。そもそもその職種で仕事を探している人が少ない時期に広告費だけ積んでも、応募はそれほど増えません。提案を受けたら「その増額分で何名増える見込みか」を必ず聞いてください。
代行側の進め方で起きる失敗4パターン
パターン4: 原稿を作って終わり、運用がない
初月に立派な原稿を作って、あとは掲載しっぱなし。求人は動かさないでいると表示が下がっていくため、時間が経つほど応募は細っていきます。職種名・写真の差し替えや原稿の見直しといった手入れが必要です(同じ求人を頻繁に投稿し直して表示を上げる手法は、Indeedの掲載基準で禁止されています)。
防ぎ方は、契約前に「原稿の改稿は月に何回まで対応か」「掲載基準に沿って、求人の手入れをどう続けるか」を確認すること。
パターン5: レポートが応募数だけ
月次レポートに応募数しか載っていないと、改善の議論ができません。表示回数、クリック率、応募率、連絡がついた率まで並んでいて初めて「どこが詰まっているか」が見えます。
とくに注意したいのが、SNS広告など複数の経路を併用しているときです。求人ページへの応募が何件あったかは分かっても、そのうち何件がその広告経由なのかが分からなければ、かけた広告費に見合っているかは判断できません。「これだけ表示されました」だけの報告なら、費用対効果はまだ何も説明されていないと考えてください。
防ぎ方は、商談時にレポートのサンプルを見せてもらうこと。「見せられません」という回答なら、その時点で判断材料になります。
パターン6: 予算を分散させる
複数の媒体に薄く予算を撒くと、どの媒体も表示が伸びず、しかも効果検証ができません。まず1媒体に集中して数字を見極め、勝ち筋が見えてから横展開するほうが、結果的に早く着地します。
防ぎ方は、初期3ヶ月の媒体戦略を「なぜこの媒体に、いくら入れるのか」まで説明してもらうこと。
パターン7: 応募後の設計がない
お金をかけて集めた応募を、連絡がつかずに取りこぼすのが最ももったいない失敗です。応募した人はほかの会社にも並行して応募していることが多く、連絡が遅れた会社から順に候補から外されていきます。媒体のメッセージを1通送って返事を待つだけの運用では、少なくない応募がそのまま宙に浮きます。
防ぎ方は、応募後24時間以内の連絡ルールと、複数チャネル(メッセージ・メール・SMS・電話)の併用を運用ルールとして決めておくこと。誰が対応するのかも含めて明文化します。
失敗を防ぐ3つの仕掛け
パターンごとの対策に加えて、仕組みとして次の3つを入れておくと事故が減ります。
- 初月にKPIを合意する — 採用人数、採用単価、そして「どの数字を毎月見るか」を文書で残す
- 月次の型を決める — 数字の共有 → 一番詰まっている段の特定 → 次の1ヶ月の打ち手、の順で議論する定例にする
- 3ヶ月でレビューする — 掲載開始から3ヶ月経った時点で、続けるか・やり方を変えるか・別の会社を検討するかを判断する場を最初から設定しておく
とくに3つ目は、だらだら続けて費用だけ積み上がる事態を防ぎます。最初から「3ヶ月で一度見直す」と伝えておけば、代行会社側の動きも変わります。
もうひとつ、代行会社に「その施策を自分たちでも試したことがあるか」を聞いてみるのも有効です。当社は自社でも店舗を運営していて、求人の見せ方や募集条件を変えたときに応募がどう動くかを、お客様に提案する前にまず自社の求人で確かめるようにしています。机上の提案か、試したうえでの提案かで、うまくいかなかったときの軌道修正の速さが違います。
まとめ
- 失敗の根っこは「採用のどの段で落ちているかを分解していない」こと。応募数だけを見ない
- 発注側は目的設定・現場情報の提供・総額管理を、代行側には運用・レポート粒度・応募後の設計を求める
- KPI合意、月次の議論の型、3ヶ月レビューの3点セットで、事故はかなり防げる
次の一歩は、現在の(あるいは検討中の)採用施策について、直近3ヶ月の「表示・クリック・応募・面接・採用」の数字を並べてみることです。並べた瞬間に、詰まっている段が見えてきます。
動画で見る
代表の中野谷が発信している YouTube「店舗運営チャンネル【採用と集客】」から、この記事に関係する回です。
パターン3・5(広告費を含めた総額の見方、広告経由の応募数が分からないレポートの危うさ)に関係する回です。
よくある質問
採用代行で失敗する一番多い原因は何ですか?
採用のどの段(表示・クリック・応募・連絡・面接・採用)で人が落ちているかを分解せず、「応募が少ない」の一言で片づけてしまうことです。詰まっている段が分からないと、打ち手が的外れになります。
採用代行の目標は何で合意すべきですか?
応募数ではなく「採用人数」と「採用単価」で合意します。応募数は途中経過の指標で、応募数を目標にすると条件を緩めて母数を増やすだけの運用になりがちです。
採用代行を契約する前に確認すべきことは?
原稿の改稿や掲載内容の更新がどこまで含まれるか、月次レポートのサンプル(表示やクリック率まで載っているか)、初期の媒体戦略の理由、応募後の連絡ルールの4点です。あわせて、代行会社の報酬が広告費に連動するかどうかも確認しておくと、提案の中身を読み解きやすくなります。
採用代行の見直しはいつ行えばよいですか?
掲載開始から3ヶ月の時点で、続けるか・やり方を変えるか・別の会社を検討するかを判断する場を、最初から設定しておくのがおすすめです。