フランチャイズ本部の選び方|加盟前に店舗運営の目線で確かめること
この記事の結論
フランチャイズ本部は、ブランドの勢いや収益モデルの数字より、加盟したあとに店を回すとき、本部が何をしてくれて何をしてくれないかで選びます。契約前に受け取る書面で、お金・人・店づくり・商圏の4つを確かめ、収支モデルの前提と、近い条件の既存店の求人やオーナーの働き方まで聞いてから決めてください。
フランチャイズへの加盟を考え始めると、比べたくなるのはブランドの勢いと、本部が見せてくれる収益モデルの数字です。どちらも大事ですが、それだけで決めると、加盟したあとに「こんなはずではなかった」となりやすいのも事実です。
私たちは、自分たちでもフランチャイズに加盟して店舗を運営しながら、フランチャイズ加盟者向けの講座で採用についてお話ししています。加盟店として店を回していて実感するのは、加盟してから困るのは「看板」ではなく「店を回すこと」だということです。この記事では、本部を選ぶときに、店舗運営の目線で契約前に確かめておきたいことをまとめます。
本部選びは「加盟したあと、誰が何をするか」で比べる
本部の説明は、どうしても「この看板なら、これだけ売れます」という話が中心になります。私たちが加盟前に確かめてほしいと考えているのは、加盟したあとの日々の運営で、本部が何をしてくれて、何は加盟店がやるのかです。大きく分けると次の4つです。
| 確かめる軸 | 主に見ること |
|---|---|
| お金 | 収支モデルの前提、加盟金・ロイヤルティ、違約金 |
| 人 | 採用と研修を本部がどこまで持つか、人手不足の実態 |
| 店づくり | 内外装の決まり、営業時間・休業日 |
| 商圏 | 近くへの出店の扱い、辞めたあとの制限 |
ブランドの知名度や勢いは、この4つを確かめたあとに比べても遅くありません。
契約前に受け取る書面で、まず確かめること
小売業などのフランチャイズで、加盟者に商標などを使わせ、加盟金や保証金を取る本部は、中小小売商業振興法により、契約を結ぶ前に、決められた事項を書いた書面を渡して説明しなければなりません。書面には、加盟金などのお金、商品の販売条件、経営の指導、商標などの使用、契約の期間と更新・解除が含まれます(出典: e-Gov法令検索「中小小売商業振興法」第11条・2026年10月確認)。
さらに、施行規則では次のような事項も記載事項になっています(出典: e-Gov法令検索「中小小売商業振興法施行規則」第10条・2026年10月確認)。店舗運営の目線で、とくに見てほしいものを抜き出しました。
| 書面の記載事項 | 店舗運営の目線で見ること |
|---|---|
| 本部の直近3事業年度の貸借対照表・損益計算書 | 本部そのものが続いていけるか |
| 直近3事業年度の加盟店の店舗数の推移 | 増えているか、閉じた店はないか |
| 立地条件が似た加盟店の直近3事業年度の収支 | 自分が出す場所に近い店の実績 |
| 直近5事業年度の、加盟店との訴訟の件数 | 本部と加盟店の関係 |
| 営業時間・営業日・休業日 | 自分とスタッフで回せる時間か |
| 近くに同じか似た店を出す規定 | 商圏を守ってもらえるか |
| 契約中・契約後の、ほかの事業への加盟や就業の制限 | 辞めたあとに何ができなくなるか |
| 定期的に払うお金(ロイヤルティなど) | 売上に連動するか、固定か |
| 店の構造や内外装についての特別な義務 | 初期費用と、あとから変えられるか |
| 契約に違反したときのお金の額や計算方法 | 途中でやめるときにいくらかかるか |
公正取引委員会も、フランチャイズ・ガイドラインで、本部が加盟者を募集するときに的確に開示することが望ましい事項を挙げています。加盟時に払うお金の性質と返還の有無、ロイヤルティの算定方法、経営不振のときの支援の有無、契約の解除や中途解約の条件、近くへの出店(ドミナント出店)についての契約上の扱いと計画などです(出典: 公正取引委員会「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」2026年10月確認)。
検討している本部がこの法律の対象になるかどうかも、あわせて確かめてください。書面は、受け取って終わりにせず、分からない項目は分かるまで質問してください。契約の内容は、加盟前に弁護士や中小企業診断士など第三者に見てもらうと安心です。
収支モデルは「前提」を確かめる
本部が見せてくれる収支モデルは、加盟を判断する大事な材料です。ただし、その数字をそのまま自分の店の見込みにするのは危険です。
代表・中野谷のひとこと
本部のお金の見せ方って、税込で入れてくるじゃないですか。うちはこれだけ稼げますよって。売上がこれで、人件費がこれで、手残りがこれだけ残りますっていうのは分かるんですけど、税込だよなって思うと、ちょっと辛いですよね。
収支モデルを見るときに、私たちが確かめているのは次の点です。
- 売上や手残りは税込か、税抜か
- 人件費に、オーナー自身が店に立つ時間が入っているか(オーナーが無給で働く前提になっていないか)
- 会社が負担する社会保険料、借入の返済や利息、設備の減価償却が入っているか
- 開業直後の集客の費用を、本部と加盟店のどちらが持つか
公正取引委員会は、本部が予想売上や予想収益を示すときは、似た環境にある既存店の実績などの根拠ある事実と、合理的な算定方法に基づく必要があり、その根拠と算定方法も示すべきだとしています。既存店の平均などから作ったモデル収益を示す場合は、予想売上ではないと分かるように示すことも求めています(出典: 公正取引委員会「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」2026年10月確認)。示された数字が「予想」なのか「モデル」なのかを、まず確かめてください。人件費の中身の考え方は店舗の人件費の考え方でも解説しています。
人: 採用と研修を、本部がどこまで持つか
加盟してから悩みやすいのが、人のことです。看板があれば応募は入りやすくなりますが、応募への連絡、面接、店での教育は、加盟店が担うことが多いものです。本部任せにしたときに起きやすいことはフランチャイズ加盟店の採用が本部任せで失敗する理由で詳しく書いています。
公正取引委員会のガイドラインは、本部が営業時間や臨時休業について説明するときに、募集する事業で特定の時間帯の人手不足や人件費の高騰など、経営に悪影響を与える情報がすでに明らかになっていれば、それを加盟希望者に示すことが望ましいとしています。人手不足について示すときは、似た環境の既存店の求人の状況や、加盟店オーナーの勤務の状況など、実態に即した根拠ある事実を示す必要がある、ともしています(出典: 公正取引委員会「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方」2026年10月確認)。加盟を検討している側から、遠慮なく聞いてかまいません。
もう一つ、加盟前に確かめてほしいのが研修の受け皿です。私たちの店舗でも、教える側のスタッフが続けて抜けて、店の中で新人に教えられる人がいなくなったことがあります。そのときは、本部にお願いして本部の研修を入れてもらい、乗り切りました。店で教えられる人がいなくなったときに、本部が研修を引き受けてくれるかどうか。これは、加盟したあとに効いてくる違いです。新しく店を開くときの人の集め方は新店オープニングスタッフの採用にまとめています。
店づくり: 内外装の決まりと、スタッフの居場所
内外装は、本部の決まりに従うことが多い部分です。初期費用が大きくなりがちなので、加盟店として不満を感じやすいところでもあります。ただ、私たちはここで本部に助けられた経験があります。
代表・中野谷のひとこと
本部からは、スタッフルームはこの大きさで絶対に必要です、という話をされました。必要なのかどうか分からなかったんですけど、実際に作ってみて、しっかりスタッフルームがあってよかったなと今は思ってます。自分で一から経営するとなると、そこは気づけない。フランチャイズ本部って、そういう意味でありがたいなと思っちゃいますね。
着替えや休憩の場所がない店は、それだけでスタッフが働き続けにくくなります。本部の内装の決まりに、お客さまから見えない場所の設計まで入っているかは、本部が店の運営をどこまで考えているかを知る手がかりになります。
一方で、ブランド専用の内装は、あとから別の業態に転用しにくいという面もあります。やめるとき、別の業態に切り替えるときに、内装をどう扱うことになるのかも、契約前に聞いておくと安心です。
商圏: 近くへの出店と、辞めたあとの制限
最後に、契約書の中でも見落としやすいのが商圏の話です。書面の記載事項にもあるとおり、本部や別の加盟店が、自分の店の近くに同じか似た店を出すことがあるのか、その規定があるのかを確かめてください。近くに同じ看板の店ができれば、お客さまだけでなく、働きたい人も分け合うことになります。
こうした話が持ち上がったときに取れる選択肢は、契約にどう書かれているかで決まります。
あわせて、契約が終わったあとの制限も確かめます。同じ業種で別のブランドに加盟することや、似た事業を営むことが、どの範囲で、どのくらいの期間禁止されるのか。途中でやめるときに払う違約金の額や計算方法も、書面の記載事項です。始める前に、やめるときのことまで決めておくのが、加盟の判断では大事です。
加盟店オーナーに話を聞くときのコツ
本部の説明だけでなく、すでに加盟している店のオーナーに話を聞くのは、とても有効です。ただ、聞き方にはコツがあります。
私たちの見立てでは、「うまくいっていますか」と聞いて返ってくる「大丈夫ですよ」は、そのまま受け取らないほうがいい。加盟したことを失敗だとは、なかなか言いにくいものだからです。代わりに、次のような、事実で答えられる質問をしてください。
- オーナー自身は、週に何日、店に立っていますか
- スタッフは何人で、どうやって採用していますか
- 教える人がいなくなったとき、どうしましたか
- 本部に相談したとき、どう動いてくれましたか
数字の話は、オーナーの記憶よりも、本部から受け取る書面で確かめるほうが確実です。
まとめ
- 本部は、看板や収益モデルより、加盟したあとに誰が何をするか(お金・人・店づくり・商圏)で比べる
- 小売業などの本部には、契約前に書面を渡して説明する義務がある。財務、店舗数の推移、似た立地の店の収支、近隣出店、違約金まで読む
- 収支モデルは、税込か税抜か、オーナーの労働や社会保険料が入っているかなどの前提を確かめる。予想かモデルかも聞く
- 採用と研修の受け皿、内装の決まり、辞めたあとの制限を、加盟前に具体的に聞く。既存オーナーには事実で答えられる質問をする
次の一歩として、検討している本部に、契約前に受け取れる書面の見本と、自分が出したい場所に近い店の収支を見せてもらえるか、聞いてみてください。その答え方が、本部を選ぶいちばんの材料になります。
よくある質問
フランチャイズ本部は、どう選べばよいですか?
加盟後に店を回すときのことを、お金・人・店づくり・商圏の4つに分けて確かめます。収支モデルの前提、採用と研修を本部がどこまで持つか、内装や営業時間の決まり、近くへの出店と辞めたあとの制限です。ブランドの知名度は、その4つを確かめたあとに比べます。
加盟前に、本部から受け取る書面には何が書かれていますか?
小売業などのフランチャイズで加盟金などを取る本部は、中小小売商業振興法により、契約前に書面を渡して説明することが義務づけられています。加盟金やロイヤルティ、経営の指導、契約の期間・更新・解除のほか、本部の財務の状況、加盟店の店舗数の推移、立地が似た店の収支、近くへの出店の規定、違約金などが記載事項です。
本部が示す収支モデルは、そのまま信じてよいですか?
そのまま自分の店の見込みにはしないでください。税込か税抜か、人件費にオーナー自身の労働が入っているか、社会保険料や借入の返済が入っているかを確かめます。公正取引委員会は、予想売上を示すなら根拠と算定方法を示すこと、モデル収益なら予想ではないと分かるように示すことを求めています。
フランチャイズに加盟すれば、採用は本部がやってくれますか?
本部によって大きく違います。求人の原稿や採用ページは本部が用意しても、応募への連絡や面接、店での教育は加盟店が担うことが多いので、どこまでを本部が持つかを契約前に具体的に聞いてください。教える人が店にいなくなったとき、本部が研修を引き受けてくれるかも確かめておきます。
既存の加盟店オーナーに話を聞くときは、何を聞けばよいですか?
儲かっているかどうかより、オーナーが週に何日店に立っているか、スタッフを何人雇い、どうやって採っているか、本部に相談したときにどう動いてくれたか、を聞くと実態が見えます。数字の話は、本部から受け取る書面で確かめます。